オープンイノベーション型新規事業創出支援チーム「NAIGAICREW」では、長崎の健康課題を解決するためのヘルスケアプロジェクト創出に向けて活動してきました。
【過去の実施イベント】
・2021年12月4日に CO-DEJIMA にて開催したヘルスケア・アイデアソン
https://nagasaki-keizai.jp/other/topics/1722
・2022年3月12日に開催したオンラインイベント『「新規事業」×「ヘルスケア」×「メタバース」』
https://nagasaki-keizai.jp/other/topics/2259
今回は長崎市主催により、プロジェクト創出に向け「所属組織を横断したコミュニティ形成」に特化した第二回ヘルスケア・アイデアソンを、2022年6月4日にDIAGONAL RUN NAGASAKI(ダイアゴナルラン ナガサキ)にて開催し、以下の各企業・団体より20名が参加しました。
【日 時】 2022年6月4日 10:00~18:00
【場 所】 DIAGONAL RUN NAGASAKI(ダイアゴナルラン ナガサキ、十八親和銀行旧思案橋支店1階)
【主 催】 長崎市
【共 催】 NAIGAICREW、佐世保市
【参加者】 株式会社アドミン
医療法人明和会 伊崎脳神経外科・内科
京セラコミュニケーションシステム株式会社
株式会社シーエーシー
株式会社十八親和銀行
株式会社テレビ長崎
株式会社デンソーウェーブ
株式会社日本理工医学研究所
学生団体Front Line Project
【講評陣】 株式会社ジョイフルサンアルファ 専務取締役 長信 一治氏
長崎県 企画部/産業労働部 政策監 三上 健治氏
長崎県立大学 看護栄養学部 栄養健康学科 公衆衛生学 竹内 昌平氏
株式会社ふくおかフィナンシャルグループ福岡銀行 ビジネス開発部 部長代理 上野 隆一氏
【プログラム】
10:00~オープニング
10:05~インプット①
10:20~インプット②
10:50~インプット③
11:20~インプット④
11:40~昼食
12:40~ワーク(チーム組成)
16:00~ラップアップ≪発表資料作成ラストスパート≫
16:30~発表(1チーム10分程度)
17:30~講評
18:00 終了
■インプット①
NAIGAICREWメンバーの山田(長崎市商工部産業雇用政策課)から開会挨拶ならびにNAIGAICREWについて説明しました。あわせて同・鍬先(十八親和銀行地域振興部)の説明により、「新たな取組を達成していくため、コミュニケーションをとり、組織の垣根を超えたチーム組成を実現する」という今回のヘルスケアイベントの目的を共有しました。
■インプット②
続いて、株式会社リージョナルクリエーション長崎 オフィス・商業事業企画部の藤下部長から「スポーツ・地域創生事業長崎スタジアムシティプロジェクトの取組みについて」と題してお話しいただきました。
長崎スタジアムシティプロジェクトは、アリーナ、ホテル、商業施設、オフィスビルを一体開発する中で、スポーツ×ファン×べニューで上質な感動体験をもたらし、クラブ・地域が共に成長してモデルづくりを進めるものです。民間企業として覚悟を持ってスポーツを通じた地域創生にチャレンジしており、長崎での成功モデルを横展開し、日本全体の発展へ貢献したいという熱い思いを語っていただきました。
■インプット③
続いて、アストラゼネカ株式会社 コマーシャルエクセレンス本部 イノベーションパートナーシップ i2.JPプログラムリードの大林氏より 「近年のヘルスケア動向とアストラゼネカが取り組むオープンイノベーション」 と題してお話しいただきました。
*i2.jpは200を超えるパートナーが加入する、日本最大級のヘルスケア・オープンイノベーション・ネットワークです。
近年の国内ヘルスケア動向として、少子高齢化に伴って増加する国民医療費の3分の1以上が生活習慣病関連となっております。このような状況の中、特定健康診査の受診率が50%を割る世代も多く、疾患の予防や早期発見・治療介入を目的とするソリューションが求められています。 世界に目を向けると、新たなソリューションとなるデジタルヘルスへの関心度は非常に高く、ヘルステック企業の合計企業価値は5年間で5.5倍に成長し、1.7兆ドルに到達しています。日本発のデジタルヘルス関連スタートアップも台頭し、今後ますます新たなソリューションが私たちにも提供されると考えられます。 アストラゼネカは、Japan Vision 2025「イノベーションを通じて患者さんの人生を変えるリーディングカンパニーを目指す」を推進しており、本ビジョンを支える3つの柱のうち、i2.JPは「患者さんを中心とするビジネスモデルのパイオニアに」を特に推進しています。従来の治療フェーズのみならず、患者さんの医療体験全体を向上させるため、社外パートナーと協力してオープンイノベーションに取り組んでいます。 i2.JPの活動にご関心のある企業・団体様は、お気軽にご連絡ください。 (問い合わせ先:i2JPWebMaster@astrazeneca.com) |
■インプット④
続いて、株式会社ふくおかフィナンシャルグループ 福岡銀行ビジネス開発部 上野部長代理より「ビジネス開発部の組織と役割」についてお話しいただきました。
約6年前から、デジタルトランスフォーメーションに向けた体制をスタートさせ、ビジネス開発部として実証実験プロセスに取り組んでいます。 アイデア創出から実現に向けたプロセスとは、顧客起点でアイデアを数多く創出し、スピーディーに改善を繰り返すことで、新たなビジネスや生産性向上に向けた取組みの成功確率を高めるというもので、約2年間で231件のアイデアを創出、そのうち商用化にたどり着いたのは3%でした。 なお、これらの取組みにおいては「顧客ニーズ」「実現性」「経済合理性」を要素とする必要があります。 また、色々な人がコミュニケーションしながら次のアイデアを創出すると、突然変異的に素晴らしいアイデアが生まれてきます。 <イノベーションの方程式> イノベーション = マインドセット ×(創造力+実行力)繰り返し |
■ワーク開始
午後からは、株式会社ふくおかフィナンシャルグループ 福岡銀行ビジネス開発部オープンイノベーション推進グループの田原卓弥氏にファシリテーターを務めていただき、チーム組成のワークへと入りました。
【アイデアソンの目的】
そもそもアイデアソンとは、一人ひとりが知識を持ちより、共に価値創造を図る場のことであり、今回はビジネスモデルや経済合理性よりも、自由な発想を重視してやっていくとの説明がありました。
また、アイデアソンのポイントとして「発散と収束を分ける」「抽象化と具体化のように思考が行ったり来たりする流れをつくる」「メリハリを付ける」の3点の実践が求められます。
【ブレインライティング、アイデアスケッチ】
その後、それぞれ好きな言葉を付箋に1つずつ書き出し、縦・横2つの言葉を掛け合わせて、新しいサービス・商品のアイデアを考えて画用紙に書き込みました。
次に、書き込んだアイデアをグループで順番に回しながら更なるアイデアを生み出し深めていき、自身のアイデアを発表できる形にしました。
【チーム再組成】
続いて、各自のアイデアスケッチを前に貼り出し、参加者全員の投票により上位6案を決めました。その6案について各々ブラッシュアップしたいと思ったメンバーで再度チームを組成しました。
【発表に向けて】
各チームでアイデアのタイトルを決め、次の8つのQuestionsに基づいて発表内容をまとめました。
①関連する事柄をすべて書き出す
②グループに分ける
③くっつける
④捨てられないものは?
⑤逆さまにする
⑥最も大事なものは
⑦みんなは何におどろく
⑧何を約束する
【チーム発表および講評】
各チームでアイデアを発表し4名の講評陣にそれぞれ講評をいただきました。
定期券の一つ手前で降りたらポイントでキャッシュバックというサービスにより、利用者の運動不足、公共交通機関の利用者低迷、行政の医療費増加に対して、歩く人が増えて健康になることによって課題解決が図られます。サービス設計の課題感としては、ポイントの利用を商店だけでなく他のサービスも可能とする点、および歩いたことを証明できる仕組みづくりが必要な点です。
《講評》
〈上野氏〉
・3者の課題設定およびメリットの整理は良いです。
・定期券の未利用分という非合理性をヘルスケアにもっていくイメージは面白いです。
・ブロックチェーンなどと絡めるのもありだと思います。
〈三上氏〉
・健康の見える化は大事です。
・日々の活動、生きていることを価値化でき、他分野でも展開できるのではないでしょうか。
・「〇〇するとお得シリーズ」という展開もよいのではないかと思います。
〈竹内氏〉
・それぞれみんながお得になる発想は良いです。
・性悪説で考えた場合、歩くとキャッシュバックと定期券は相性が悪いのかもしれないです。
・組み合わせを変える発想もありではないかと思います。
〈長信氏〉
・歩くという行為に目を付けた着眼点が素晴らしいです。
・意識していないことを意識させるという視点が良いと思います。
財政・高齢化の進展・若者の流出といった長崎の課題と、健康でいることのインセンティブを掛け合わせて検討し、医療費を下げることで持続可能な社会をつくることを考えました。
具体案として、ジムに通うごとにマイナンバーカードにポイントが還元されトレーニングの促進により健康でいることがお得というマインドセットを進めていくようにします。
結果として財政状況が良くなり、若者の生活支援を実施することで若者が住みやすい町になり、持続可能な長崎へなるというものです。
《講評》
〈三上氏〉
・鍛えることは生物学的にも大事です。
・マイナンバー促進は県としても課題であり、ヘルスケアに紐づけることはヒントとなります。
・ジムでトレーニングの際に発生するエネルギーを集めるなどもありではないでしょうか。
〈竹内氏〉
・マッチョな都市長崎の肝はマイナンバーでポイント還元であり、そこに「健康でプラスになる」というところは面白いです。
・ジムに限定せず、健康にプラスであれば他でも還元という形でもよいのではないでしょうか。
〈長信氏〉
・若者を戻そうというのではなく、今いる方々で町を活性化という発想は面白いです。
〈上野氏〉
・健康寿命世界一というビジョンはレバレッジが効くので良いと思います。
・年1回の健康診断も、今後はタイムリーな健康診断になってくると思うのでそういった未来につながる設計もありだと思います。
「目指せデヴィ夫人」ということで、「いつ頃までに何をしたい」というライフプランを入力すると、そのための健康面での具体的な行動プランをシステムで判断し提案、現状の達成状況などを告知する機能を有するアプリサービスです。
やりたいこと実現のためには、健康のほか金銭面も重要であるため、ファイナンシャルプランナーサービスの付与などによるマネタイズも可能と考えました。
《講評》
〈竹内氏〉
・健康を何か考える際に、先にガマンが来てしまうのはもったいないので、それをポジティブにとらえるのはGOODだと思います。
〈長信氏〉
・人生と健康のリマインダー機能のイメージだと思います。
・目標とプロセスは人生そのもの、自動リマインドは面白いです。
〈上野氏〉
・人生でやりたい10の目標という前向きな動機付けの着眼点は素晴らしいです。
・これから様々な情報がとれる世界観の中で、違う視点でのディレクションができるサービスになりうると思います。
〈三上氏〉
・マッチングアドバイスアプリのようですが、アプリはネーミングが大事であり、ネーミングが素晴らしいです。
・現実的展開として「ここに行けば」という場所情報の付加はありなので、ゼンリンの観光MaaSアプリ「ストローカル」との連携など面白いと思います。
健康になると寿命が延び、これが実現することで労働時間が減らせ、健康な時間をつくることによって、収入を増やしQOLの改善「健康に価値をつける」を実現します。
健康になれば還付金がもらえるしくみとして全国民が強制参加します。
今後の実現性の課題としては、健康になった結果のメリットデメリットがないことです。
《講評》
〈長信氏〉
・元々みんな健康で、不健康になっていく前提ですが、マイナスになっていく事の何処に価値を付けるのかを考えて欲しいです。
〈上野氏〉
・労働時間が減っていくのはロボットなど将来ビジョンがありますが、そうなったら休みが増えて家でゴロゴロされても困るので、その一つの解として、健康になることが「新しい労働」というスタイルだとすれば、そこにアイデアの原点があるところがおもしろいです。
〈三上氏〉
・病気はなりたくてなるものではないので、病気が「悪」となるのは怖いです。
・リアルタイムで健康管理をしている人がGOODなどでもよいのではないでしょうか。
〈竹内氏〉
・WHOでも健康の定義は難しく、健康を指標にすること自体が難しいので、とにかく難しい課題に挑戦した感じです。
・健康の一つの側面だけ抜き出しているので、みんなへの問いという点で良かったと思いますが、生まれつき病気だった人などにどう対応するかという視点では課題があります。
「動ける老人」をつくることがポイントで、年齢を重ねても動けるという健康寿命の増進のため、ウェアラブルのズボンや靴などで物理的に快楽成分を与え、精神的なウォーキングハイを目指します。
また、ウェアからデータをとって、ほかのサービスと連携することをイメージしています。
事業化に向けては、若い人たちからウォーキングハイにして、無意識に健康な状態をつくっていきます。
《講評》
〈上野氏〉
・アイデアの整理として歩くことに焦点を絞ったのは素晴らしいです。
・人類はそもそも健康のために歩くというわけではなかったので、ウォーキングの再定義というものが見えて面白かったです。
〈三上氏〉
・色々な「ハイ」は、苦しいフェーズを抜けないと到達しないので、そういう状態に辿りつくためのアプリやコーチングなどは必要ではないでしょうか。
・例えば、この道を通れば必ずハイになるとか、男女の出会いという視点では、相手がキラキラ見えるなど、色々なアイデアが広がる面白いネタだと思います
〈竹内氏〉
・動ける老人をつくるというのは面白いと思います。
・快楽成分というのは、本当にそのとおりで、ランナーズハイになるとカンナビノイドの成分が出てくるという研究もあるので、そことのコラボは面白いかもしれないです。
〈長信氏〉
・人も動物であり、人の行動原理も欲求からくるので、そこの着眼点は面白いと思います。
・マズローの欲求の5段階から、動ける高齢者で自己実現を目指すのかと思いました。
おじさまやおばさまが遊べる公園がないので、過疎地域のゲートボール場や学校などを利活用し、無料で参加できて、気兼ねなく大人が遊びに特化できる場づくりを通じて健康管理のアナウンスができるようにします。
《講評》
〈上野氏〉
・こどもの時は知らない人と意気投合して遊んでいたので、大人になっても遊ぶ機会などの行動パターンを増やすのはありだと思います。
・バーチャルよりもリアルにネットワークを広げる可能性を感じました。
〈三上氏〉
・リアルとメタバース両面を経験できる年代の子供にこそ、はまって欲しいと思います。
〈竹内氏〉
・ヨーロッパやアメリカでは、普通に大人がサッカーしているので、そういった環境で安全に遊べるなら面白いと思います。
・健康管理を繋げるのはありきたりかもしれませんが、実現性は高いと感じました。
〈長信氏〉
・キッザニアを連想したので、ヘルスケアをテーマにした大人向けの施設として商業ベースでの可能性もあるのではないでしょうか。
・今までは「集まる」という発想はなかったですが、数値化して競わせるなどの楽しさを入れることで、ジムよりも楽しく商業ベースとしていけそうな発想だと思います。
■総括
インプットのためご登壇いただいた方やご講評くださった方、そして何よりも素晴らしい参加者のみなさまのおかげで、今回の目的である「県内外プレイヤーによる共創コミュニティの醸成」がしっかりと実現でき、とても素晴らしいイベントとなりました。
今回のイベントで出たアイデアやコミュニティをNAIGAICREWは今後しっかりとフォローして参ります。
(2022.6.17 寳珠 真一)