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長崎経済研究所

地域活性化の取組みが注目される五島市 ②

■五島の恵みを産業化

 五島市は1,000万本を超える椿が自生する椿の島としても知られていて、昔から椿油は五島を代表する特産品である。ここでは、その椿から取った酵母を活かした新たな事業を紹介したい。

椿

出所:五島の椿(株)

 従前より五島市商工会(五島市岐宿町)は椿を使った新たな産業振興に取り組み、椿から採った酵母(=「五島つばき酵母」。以下、単に「酵母」)が酒類、魚醤、パンなどに利用できる汎用性の高さに注目していた。ビジネス展開するにあたっては、行政、大学、島外企業、地元生産者、商工団体等からなる「椿研究会」で情報共有・研究を重ね、同研究会を通じて美容・健康器具の株式会社MTG(愛知県、松下剛社長)の協力を受けた。これは五島出身の松下社長が故郷に貢献したいという思いを抱いていたからで、MTGグループのひとつとして2018年に五島の椿株式会社(五島市中央町、谷川富隆社長)が設立され、酵母の所有権の譲渡を受けるに至った。谷川社長は商工会勤務時代からこの事業に携わり現在は同社の代表を務める。

 このような経緯もあり、同社では酵母の販売先を原則的に五島の企業としている。地元企業と一緒に酵母を使ったビジネスを展開していき、雇用の受け皿にもなりたいと考えている。これまでに、後述する五島列島酒造では「五島椿」、五島ワイナリーでは「五島椿ワイン」「スパークリングワイン キャンベル・アーリー 2021(ロゼ)」という商品を開発しているほか、魚醤や、イタリアンレストランでの使用など、島内企業による利用も進んでいる。同社自身でも石鹸や保湿水などを販売しているほか、例外的に島内外のベーカリー約80社にパン酵母の提供実績があり、五島と酵母の知名度の向上を図っている。

 これら一連の動きは、地域資源を活用して付加価値を生み出している好事例といえるだろう。

 五島は豊富な魚介類や農産物など食材にも恵まれている。島グルメに合ったお酒もつくっているので紹介したい。

焼酎「五島芋」と「五島麦」

出所:(株)五島列島酒造


 ひとつめは焼酎だ。株式会社五島列島酒造(五島市三井楽町、三﨑清一郎社長、谷川友和杜氏)は、地域就農者の事業継続と雇用の創出を目的に2008年に設立された。同社は、五島の芋・米・大麦・水を原料とすることにこだわって酒づくりをしている。芋焼酎「五島芋」は地域の伝統食「かんころ餅」にも使用する甘くほくほくした品種「高系(こうけい)14号」と米はヒノヒカリを使っていてフルーティーな香りと優しい甘味が特長だ。より甘い品種の「紅はるか」を使用した「五島芋 紅はるか 樽熟成」も好評で生産が間に合わないくらいである。麦焼酎「五島麦」はミネラルをたっぷり含んだ二条大麦の香ばしさが特長だ。水は七岳の湧水を使っている。国内外の品評会で受賞歴もあり品質は折り紙付きである。食用さつまいもを使用することや島外で精麦すること、そして1回の仕込み量が少ないことからコスト高となるが、島の原料でおいしい焼酎をつくりたいという思いからこのやり方を続けている。今はコロナ禍前の出荷量に戻そうと取り組んでいるところだ。  
 毎年恒例の新酒まつりには、他所には余り見られないような子供向けの遊具や地元産品の販売等があり地域のおまつりという色合いが強い。まずは島民に飲んでもらうことを第一に考えている同社の、地域を大切に思う活動といえるだろう。

 ふたつめはワインである。メモリードグループの株式会社五島ワイナリー(五島市上大津町、境目権二社長)は、五島産のぶどうを使って特産品となるようなオリジナルワインをつくろうと、2006年からぶどうの栽培を開始した。2009年から収穫を始め、当初は他県のワイナリーで醸造しながら技術を高めた。2014年から島内の自社ワイナリーで醸造を開始し、原料栽培から醸造、瓶詰まで島内で完結させることができた。国内の離島にあるワイナリーは同社を含めて2か所のみという希少性も特色だが、ミネラル感のある島独特のぶどうを使っていることが特長で、アジア最大級のワインコンペでの受賞も経験した。


ワイン各種

出所:(株)五島ワイナリー


 今ではぶどうの栽培面積は自社栽培2.4ha、契約農家1haの計3.4ha。主な品種はキャンベル・アーリー、ナイアガラなどで、ここ数年は台風等の影響で生産量が減少したが、今年は五島産ぶどうの収穫量が多いことから1万本以上の生産を見込んでいる(島外産ぶどうによる生産を除く)。ワインはワイナリーがある五島コンカナ王国をはじめとするグループのホテルやレストランで提供されているほか、ワイナリーに併設した店舗や通信販売により販売されている。ワインに合う料理の開発や、ワインを使ったオリジナルケーキやカレーパンも販売していて、五島のワインをより身近に感じてもらえるようにSNSでも情報を発信している。

(2022.10.6 宮崎繁樹)


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