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長崎経済研究所

長崎経済同友会 活動レポート~VOL .1

◇佐賀経済同友会との共同視察

『佐賀県鹿島市の経済振興と交流促進への取組みについて』

 長崎経済同友会の「まちづくりと交通委員会」は、2023年7月25日に佐賀経済同友会の「活力ある地域づくり推進委員会」と共同で佐賀県鹿島市を視察しました。佐賀側のテーマは特急列車本数の減少による鹿島地域の振興対策に取り組むことであり、一方、長崎側のテーマは西九州新幹線開業後の課題の把握と隣県である佐賀県をより理解し、相互交流を深めることでした。

(鹿島市観光ガイドブックより)
(当社にて一部加工)
 

 両県に共通する課題として人口減少問題が挙げられます。この課題に対する解決策として「しごとづくり」、「ひとづくり」、「まちづくり」がクローズアップされています。今回は、まちづくりや観光資源を最大限に活用して交流人口を増やす取組みを視察しました。

1.東亜工機株式会社を視察

 船舶部品メーカーの東亜工機株式会社(本社:鹿島市)の工場を視察しました。同社は船舶用ディーゼルエンジンシリンダライナの製造でトップメーカーであり、内径600mm以上の大型シリンダライナにおいては世界シェアの40%、日本国内シェアでは90%を誇っています。

 長崎経済同友会では、新産業の創造および活性化にも取り組んでおり、東亜工機の人材投資への積極的な姿勢は、長崎における新産業創造のヒントとなりました。また、東亜工機は鹿島市居住者を中心に従業員を採用しており、熟練技術の伝承も技能試験や技能競技会を目標に掲げながら人材投資を積極的に行っています。これにより、技能者の年齢構成も非常にバランスが取れている印象を受けました。

(東亜工機株式会社の全景[会社案内パンフレットより])
(加熱炉での作業の様子)   
(加熱した原料を型へ流し込む様子)
(最終検査を待つシリンダライナ)

2.祐徳稲荷神社を参拝

 アフターコロナのインバウンド(訪日客)需要の回復を見据え、祐徳稲荷神社を参拝しました。佐賀県庁のフィルムコミッションがタイの映画やドラマのロケ誘致を行ったことがきっかけで、映画やドラマの撮影が佐賀県内で行われました。これらの作品がタイ国内で大ヒットし、コロナ禍前までは佐賀県のロケ地巡りをするタイ人観光客が急増していました。

(風鈴で涼を演出する祐徳稲荷神社本殿)
(昔ながらの風情が残る参道の様子)

3.鹿島市長の講演(鹿島市長 松尾 勝利 氏)

 鹿島市長の演題は、「むしろこれから!」。特急かもめが鹿島市に止まらなくなったことで、まちの衰退や交通への影響が出ている課題を抱えながらも、市長のリーダーシップと情熱によって地域の再生と発展を実現する強い意志が伝わりました。

 講演では、鹿島市の自然環境の豊かさと地域資源の活用によるまちづくりが紹介されました。

 特に今回視察した酒蔵ツーリズムや祐徳稲荷神社などの観光資源は、地域の魅力を最大限に引き出す手法として説明があり、地域の伝統文化や民俗芸能の継承についても、これらの取組みが地域のアイデンティティを高め、住民の結びつきを深めることにつながるとのことでした。

(鹿島市 松尾市長の講演の様子)

4.肥前浜宿まちなみ・酒蔵めぐり

 江戸時代から昭和時代にかけて酒や醤油などの醸造業が中心に発展した地域で、現在は3つの酒蔵が製造を続けています。酒蔵通りでは、お酒の無料試飲や購入、酒蔵スイーツ、酒蔵見学などが人気を集め、国内外から観光客が訪れています。肥前浜宿の酒蔵通りは、「肥前浜宿・茅葺(かやぶき)のまちなみ」と共に、歴史的価値のある地域として国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されています。

(肥前浜宿の酒蔵通り)
(酒蔵での試飲の様子)

 今回の視察では、鹿島市のさまざまな課題や取組みを幅広く視察することができました。特に、人口減少への対策として、新産業の活性化(しごとづくり)や地域資源を活用した観光振興(ひとづくり、まちづくり)への取組みが重要であると感じました。これらの取組みは、地域の活性化に向けた貴重な道筋を示しています。

 企業視察では、人材育成への投資が成功の鍵であると感じました。技術革新に対応するためには、人材の育成や専門知識の継続的な更新が欠かせず、地域が連携して人材育成に力を入れることが、地域の産業発展につながることを強く実感しました。

 次回は佐賀経済同友会に長崎を視察いただき、お互いの地域の課題解決に向けて知恵を出し合いたいと考えています。地域の再生と持続可能な発展に向けては、リーダーや企業が積極的に協力し、知恵を結集することが不可欠です。地域の課題を克服し、持続可能な未来を築くために、引き続き協力していくべきであると感じました。

(2023.8.1 関山 隆史)

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