ながさき経済web

長崎経済研究所

『医療・海洋・デジタル』を成長産業に位置付け
産官学のトップが合意

~2022年8月22日、第24回長崎サミット開催~
長崎都市経営戦略推進会議

 去る8月22日、長崎の地域経済活性化について産官学7団体のトップが意見を交わす「第24回長崎サミット」を長崎市内で開催しました。

  【メンバー】
    長崎商工会議所   宮脇 雅俊 会頭
    長崎経済同友会   東  晋  代表幹事
    長崎県経営者協会  石瀬 史朗 会長
    長崎青年会議所   松島 雄大 理事長 
    長崎県       大石 賢吾 知事
    長崎市       田上 富久 市長
    長崎大学      河野 茂  学長
  【進行役】
    日本銀行長崎支店  鴛海 健起 支店長

 今回の長崎サミットでは、①人口減少やデジタル化の加速など、長崎経済が対応を求められている環境変化や課題について認識を共有したうえで、②各参加者が、目指す長崎経済の将来像や活性化の方向性、その背景にある地域に対する思いなどを表明し、③今後の経済・産業振興の具体的な方向性について集中的に討議を行いました。

 その中で、いくつかの具体的な取り組みについての提案がなされました。

 まず長崎商工会議所からは、接客サービス・おもてなしの向上等に向け、サミットメンバーのほか、観光・交流の関係団体や事業者等の参加による「訪問客満足チーム」(仮称)の設置の提案があり、今後、関係者で検討することとなりました。

 また、長崎青年会議所からは、「行きたくなる、住みたくなるまちづくり」に関連し、長崎の将来を担う若者の発想力や行動力をフル活用し、商店街や地域コミュニティの再生・創生を目指す「若者がつくるまちプロジェクト」(仮称)を検討中との説明があり、今後、具体化するプロジェクトの内容等を踏まえサミットとして対応を検討することとなりました。

 次に、先進事例などを参考にした新産業創出を検討していくため、長崎大学を中核とした産・官・学のプラットフォームとして「長崎ヘルスケア関連産業研究会」(仮称)設置の提案が長崎商工会議所からありました。

 長崎経済同友会からも、具体的なデータや事実に基づく客観的な議論を行う研究会の設置や工程表の作成・共有について提案があり、今後、関係者で検討・調整を進めることとなりました。

 また、目指す長崎経済の将来像や活性化の方向性、今後の産業振興の具体的な在り方について話し合う中で、オープンイノベーションによる産業振興(とりわけ情報・デジタル関連)に加え、国際面での連携・交流促進、若者の発想力・行動力の活用、リカレント教育などのためには、例えば「まちなか」に長崎大学が立地して、企業や地域社会との連携が一層進むと良い、などの意見がありました。

 これらの意見を受け止め、長崎大学からは、「将来的な絵姿」について、関係者の協力を得ながら、今後、検討していくとの表明がありました。

 討議後の記者会見では、「訪問客満足チーム(仮称)」の設置に関連して、長崎県の大石知事から、「おもてなし」に関して何が足りていないのか徹底的な再検証が必要であり、長崎に初めて来る人も増えてくるため、如何にその方々に満足していただき、また戻ってきてもらえるか、そこに向かってしっかり課題を整理し対策を実行していくことが大事である旨の発言がありました。

 長崎大学の河野学長からは、近年複数の学部を新設し文教キャンパスが手狭になっていることや、経済学部と他学部の交流の必要性などを挙げ、それなりのスペースを提供していただければ、複数の学部を「まちなか」へ移転することを前向きに検討していくとの見解が示されました。

 なお、討議においては以下の2点に合意し、オープンイノベーションの手法も用いて、産・官・学が連携し、金融機関や報道機関の協力も得て、さらに県民の皆様に共感・ご理解いただくための情報発信等を行いながら、経済の活力維持や成長に向けて取り組んでいくことを確認しました。

(1)西九州新幹線の開業を機に、ハード・ソフトの双方で、交流・観光産業の発展を加速する。

 ① 交流・観光のソフト面の充実に向けた地域一体の取り組み強化として、「100年に1度」のハード面のまちの大きな変化に見合う、ソフト面の充実を図るため、課題・問題点を把握・共有し、各主体の役割分担を整理のうえ具体的な対応を推進することとなりました。

② 面的な誘客強化に向けた交通網整備や地域間連携のため、新幹線の西九州ルートの関西直結の実現を目指すことや、離島を含めた県全体、さらには北部九州という「面」としての魅力や集客力の向上のための地域間連携や官民連携を強化するほか、交通全体の改善を検討していくこととなりました。

(2)将来的な経済成長や雇用機会の創出に向けて、「交流・観光」のほか、「医療・生命科学」、「海洋・環境・新エネルギー」、「デジタル」の3分野を次世代の成長産業の有力な候補と位置づけて、育成・振興と地場企業との協業拡大に向けた検討や取り組みを進める。

① 育成・振興に注力する次世代の産業に関する関係者の共通理解の醸成のため、「長崎の産業界やアカデミアに蓄積された強みやリソースの活用の可能性」、「産業としての成長性や地域への波及効果」、「振興に向けた課題」といった観点から理解を深めたうえで、具体的な産・官・学の連携や施策等を検討していくこととなりました。

② 医療・生命科学分野においては、感染症分野や細胞医療等の先端創薬分野における長崎大学の知財、人財を核として、スタートアップ創出や企業の研究拠点の誘致を促進するとともに、ワクチン開発・創薬等に必要な資材や機器を供給できる県内産業の育成を支援することとなりました。

 ③ 海洋・環境・新エネルギー分野においては、長崎が培ってきた海洋関連産業の人財や技術力の活用が期待され、また、世界的な脱炭素化の流れの中で成長が予想される洋上風力発電関連や環境対応船などの産業化に積極的に取り組むことや、長崎大学が科学技術振興機構の採択を受けて取り組んでいる「ながさきBLUEエコノミー形成拠点」プロジェクトへの積極的な協力を通じて、養殖のDX化や安定的な流通の実現等による水産業の再生・発展を推進することとなりました。

 ④ デジタル分野においては、県・市町連携で構築したデータ連携基盤の有効活用、ならびに官民双方のデータのオープン化等を推進し、データ利活用による地域活性化や産業振興に結び付けることや、地場企業のデジタル化を喫緊の課題と位置づけ、デジタル人材の育成・確保を含めて、地域一体で支援すること、および情報・デジタル関連の誘致企業と地場企業の連携・マッチング支援を通じて、オープンイノベーションを促進することとなりました。

 長崎サミットは、西九州新幹線の開業やまちの佇まいの変化という千載一遇の機会を活かすとともに、人口減少圧力の強まりや感染症の流行という厳しい環境変化のほか、デジタル化、脱炭素化、SDGsの考え方の浸透といった大きな潮流に適応しながら地域経済の成長を実現していくため、今後も、産・官・学の連携を一層深めて具体的なアクションにつなげていきます。

                (2022.9.13 寳珠真一)

この記事は参考になりましたか?

参考になったらシェアお願いします!
メールマガジン登録・解除はこちらから
メールマガジン登録/解除
«
»
Copyright © 2021 株式会社 長崎経済研究所 All Rights Reserved.

ページトップ