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長崎経済研究所

2024年春の県内企業の新卒者採用と初任給および来春の採用計画

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■ 調査対象 :県内主要企業372社
■ 調査方法 :WEBと郵送を併用しアンケートを実施
■ 調査期間 :2024年4月26日~5月31日
■ 調査事項 :2024年春の採用実績(人数、初任給)、2025年春の採用計画
■ 回答企業数:製造業41社、非製造業133社、合計174社(回答率46.8%)
  このうち「定期的な新卒者の採用は行っていない」とする49社を除いた有効回答企業数は製造業34 社、非製造業91社、合計125社(回答率33.6%)
 ※端数処理の関係で内訳の計は必ずしも100%にならない
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※クリックするとグラフはすべて拡大できます。


1.今春の新卒者採用状況 ―採用者数は前年を上回る―

(1)採用実施企業の割合 ―採用した企業の割合は47.1%、前年比2.2ポイント上昇―  

 調査回答企業174社のうち、今春新卒者を採用したのは82社で、その割合は47.1%と前年同期調査(同185社のうち83社、44.9%)を2.2ポイント上回った。

 内訳をみると、「前年より増やした」とする割合が2.2ポイント増加(前年同期調査34社、構成比18.4%→今回38社、21.8%)。一方、「前年より減らした(応募が少なかった)」(同16社、8.6%→19社、10.9%)と「今年は応募が無く、採用できなかった」(同26社、14.1%→30社、17.2%)を合わせた ‘計画通りに採用できなかった’ 企業の割合も3割近く(22.7%→28.1%)を占めた(図表1)。


図表1 2024年春新卒者採用状況(前年同期調査との比較)


(2)採用者数 ―前年比18.5%増―

 今春新卒者を採用した企業82社の採用者数は378人で前年実績(319人)を18.5%上回った。学歴別内訳は、大学院卒28人、構成比7.4%、大卒119人、同31.5%、短大・高専卒27人、同7.1%、高校卒204人、同54.0%となっている。

 採用者数を業種別にみると、製造業全体では149人、前年実績比25.2%の大幅増となった。輸送機械(48人、同11.6%増)、一般機械(15人、同200.0%増)、電気機械(24人、同26.3%増)、食料品(46人、同24.3%増)がいずれも増加した。一方、非製造業では229人、同14.5%増となった。運輸(36人、同33.3%増)、卸売(32人、同6.7%増)、サービス(63人、同57.5%増)が増加。建設(54人、同3.6%減)、小売(43人、同2.3%減)は減少したものの微減にとどまった。

 学歴別・業種別にみると、短大・高専卒(同10.0%減)が減少したのを除けば、大学院卒(同33.3%増)、大卒(同22.7%増)、高校卒(同19.3%増)はいずれも2桁台の伸び率であった。サービスはいずれの学歴も大幅増。大学院卒の7割強が輸送機械であった。

 企業規模別・学歴別にみると、大企業大卒と高校卒が大幅に増加して全体でも2桁の伸び。中小企業大卒高校卒が増加し全体でも増加した。大学院卒の7割強が大企業という結果になった(図表2)。


図表2 規模別・業種別にみた採用人数

図表3 大企業と中小企業の区分

(3)初任給 ―大卒、短大・高専卒、高校卒、4千円台から5千円台の上昇―

 初任給額(前年と今年を比較可能な回答の単純平均)をみると、大卒が209,597円で前年比4,623円増(2.3%増)、短大・高専卒は178,571円で5,525円増(3.2%増)、高校卒が173,280円で同5,410円増(3.2%)増といずれも前年を上回った(図表4)。

 ※大学院卒は、前年と今年を比較可能な回答が僅少であるためコメントを割愛。


図表4 規模別・業種別にみた学歴別初任給


2.来春の採用計画 ―9割近くが ‘今年並み以上’ を計画―

 
 有効回答企業125社のうち2025年春の採用計画について回答があった119社の計画をみると、「採用する」とした企業は90.8%で、前年同期調査における翌春の採用計画(85.2%)比5.6ポイント上昇した(図表5)。


図表5 2025年春の採用計画(前年同期調査との比較)


 採用方針の内訳をみると、「今年より増やす」(41.2%)と「今年並み」(46.2%)を合わせた ‘今年並み以上’ の採用計画を立てている企業の割合は87.4%と前年同期調査(81.3%)を上回っており採用意欲は引き続き高いものとみられる。一方、「今年より減らす」(3.4%)と「今年は採用したが来年はしない」(3.4%)という採用数を ‘減らす’ 企業の割合は6.8%にとどまった。

 これを業種別にみると、 ‘今年並み以上’ とする企業は、製造業87.5%、非製造業87.4%といずれも高い割合となっている。

 企業規模別にみても、大企業 ‘今年並み以上’ が88.8%、中小企業も 87.1%といずれも採用に意欲的な企業割合が高い(図表5、6)。


図表6 2025年春の採用予定(新卒採用を行っていない企業を除く)


 このように、2024年春の新卒採用にあたっては、採用実施企業の割合、採用数、初任給とも前年調査時(ないし前年実績)に比べて上昇している。コロナ禍も落ち着き経済が動き始め全国的に深刻な人手不足が続くなか、長崎県内企業においても欲しい人材を確保したいという積極的な姿勢が表れている。

 一方で、計画通りの採用ができなかった企業も少なからずあり、人材不足の状況は続いているものと考えられる。そのため、2025年度においても ‘今年並み以上’ の採用を計画している企業が多く、採用意欲は高い水準が続く見通しといえるであろう。

(2024.6.12 宮崎 繁樹)

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