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長崎経済研究所

「賃上げ」に関する特別アンケート

 今年の春闘は、賃上げ率の平均が3.58%となり、前年の2.07%を大幅に上回りました。この流れが来年も続くのかを探るため、県内の主要企業にアンケートを実施しました。


【調査要領】

調 査 対 象 : 長崎県内主要企業372社
回答企業数 : 153社(回答率41.1%)
       製造業42社、非製造業111社
調 査 方 法 : WEBと郵送を併用したアンケート
調 査 期 間 : 2023年10月4日~10月25日

調 査 項 目 :
 1.令和5年(年度)の賃上げ実施状況
 (1)賃上げ実施の有無
 2)賃上げの実施内容
 (3)賃上げ率
 (4)賃上げの際に重視した項目
 (5)賃上げを実施しなかった理由

 2.令和6年(年度)の賃上げ実施予定
 (1)賃上げ実施予定
 (2)賃げの実施内容
 (3)賃上げの程度
 (4)令和6年(年度)の賃上げ予定率
 (5)賃上げの際に意識すること
 (6)賃上げを実施するために必要なこと
 7)賃上げを実施しない理由


1.令和5年(年度)の賃上げ実施状況

(1)賃上げ実施の有無

 はじめに、令和5年(年度)の賃上げ実施の有無を尋ねたところ、「実施した」が94.8%(145社)と、ほとんどの企業が賃上げを行っていた。

(2)賃上げの実施内容(複数回答)

 次に、賃上げを「実施した」企業を対象に、その内容を複数回答で尋ねたところ、「定期昇給」が64.8%(94社)と最多。以下、「ベースアップ」(57.9%、84社)、「パートなどの賃金増額」(31.7%、46社)、「賞与の増額」(26.2%、38社)、「初任給の増額」(25.5%、37社)の順。

(3)賃上げ率

 また、その賃上げ率を尋ねたところ、「1~3%未満」が49.0%(71社)と約半数を占めた一方、より高い賃上げ率(「3~5%未満(26.2%、38社)」+「5%以上(15.2%、22社)」)も4割を超えている。また、「1%未満」は9.7%(14社)であった。

(4)賃上げの際に重視した項目(複数回答)

 賃上げの際に重視した項目を複数回答で尋ねたところ、「労働力の定着・確保」(80.0%、116社)と、「物価上昇への配慮」(60.0%、87社)が上位を占めたほか、「最低賃金の引上げへの対応」も39.3%(57社)あった。
 物価が高止まりし、実質賃金が低下することによる従業員のモチベーション低下への対応策をとった企業が多かったものとみられる。

(5)賃上げを実施しなかった理由(複数回答)

 賃上げを実施しなかった企業に、その理由を複数回答で尋ねたところ、「原材料価格が高騰しているため」が62.5%(5社)、「燃料(ガソリン代等)が高騰しているため」と「コスト増加分を価格転嫁できていないため」が50.0%(4社)と同率であった。

2.令和6年(年度)の賃上げ実施予定

(1)賃上げ実施予定

 令和6年(年度)も賃上げを実施するのかどうか尋ねてみたところ、「検討中」との回答が50.3%(77社)と半数を占めたものの、「実施予定」との回答も45.1%(69社)に上ったことから、県内企業が来年(年度)の賃上げについて積極的な姿勢であることがうかがわれる。一方、「実施しない」は7社(4.6%)であった。

(2)賃上げの実施内容(複数回答)

 次に、賃上げで予定、検討している内容を複数回答で尋ねたところ、「定期昇給」(65.1%、95社)と「ベースアップ」(52.7%、77社)がともに半数超を占めた。
 以下、「初任給の増額」(24.7%、36社)、「パートなどの賃金の増額」(23.3%、34社)となっている。

(3)賃上げの程度

 賃上げをどの程度予定しているのか尋ねたところ、「今年(年度)より拡大」は11.0%(16社)、「今年(年度)と同程度」が41.1%(60社)であった。
 今年と同程度か拡大させるとの回答が合わせて52.1%と、半数を超えたことから、来年の賃上げについても県内企業が積極的なことがうかがわれる。一方、「今年(年度)より縮小」は12.3%(18社)にとどまった。

(4)令和6年(年度)の賃上げ予定率

 さらに、賃上げ率について、どの程度予定しているか尋ねた(未定と回答した企業を除く)ところ、「1~3%未満」が60.2%(56社)と最多で、以下、「3~5%未満」(22.6%、21社)、「5%以上」(7.5%、7社)であった。

(5)賃上げの際に意識すること(複数回答)

 賃上げの際、意識する項目を複数回答で尋ねたところ、「労働力の定着・確保」が82.9%(121社)と最も多く、次に「従業員の士気高揚」が61.9%(89社)であった。以下、「物価上昇への配慮」(43.2%、63社)、「最低賃金の引上げへの対応」(34.2%、50社)。
 また、「業績向上の還元」が(24.0%、35社)や、「UIターン者の獲得」(8.2%、12社)といった積極的な理由で賃上げを行う企業も見られた。

(6)賃上げを実施するために必要なこと(複数回答)

 賃上げを行うために、必要な項目を複数回答で尋ねたところ、「商品、サービスの値上げ」が59.5%(91社)と6割弱となり、以下、「販路の拡大」43.8%(67社)、「事務の見直し、設備投資を通じたコスト削減」が43.1%(66社)となった。賃上げを行うために、県内企業が原材料価格や人件費の上昇分を商品価格へ転嫁するとともに、販路の拡大やコスト削減といった自助努力も併せて行っていることがうかがえる。

(7)賃上げを実施しない理由(複数回答)

 賃上げを実施しない企業に、その理由を複数回答で尋ねたところ、「原材料価格が高騰しているため」(71.4%、5社)、「燃料(ガソリン代等)の高騰が見込まれるため」、「コスト増加分を価格転嫁できていないため」(57.1%、4社)などであった。

おわりに

 今回のアンケート結果をみると、令和5年(年度)は9割超の企業が賃上げを実施していた。来年(年度)についても、賃上げを実施する予定の企業は4割超に上っている。また、その賃上げ幅については、今年と同程度あるいは拡大すると回答した企業が半数以上に上った。
 もっとも、その理由をみると「労働力の定着・確保」や「従業員の士気高揚」、「物価上昇への配慮」が大半を占めるなど、人材を確保するための防衛的な理由によるものが多い。その一方で、「業績向上の還元」などを挙げる企業も見受けられた。
 今回の調査では、県内企業が賃上げを継続するため、収益の確保とともに、販路の拡大やコスト削減、生産性の向上などにも取り組んでいることがうかがえたことから、来年の賃上げもある程度期待できるものと思われる。

(2023.11.17 泉 猛)

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