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長崎経済研究所

期待される西九州新幹線開業効果
~特別アンケートの結果から~

 2022 年9 月23 日、ついに西九州新幹線が開業しました。これを契機として、交通の利便性向上や更
なる交流人口の拡大などが期待されています。
 そこで当社では、開業によって県内企業にどのような影響があるかを探るため、県内主要企業に特
別アンケートを実施しました。


【調査要領】

1.調査対象:県内主要企業374 社
2.調査方法:WEB と郵送を併用しアンケートを実施
3.調査期間:2022 年7 月28 日~ 8 月31 日
4.調査事項:
 Ⅰ.県内経済へのプラスの効果
 Ⅱ.県内経済へのマイナスの効果
 Ⅲ.県内経済の活性化策
 Ⅳ.経営への影響
 Ⅴ.開業を契機に、開始した事業・今後取組む事業
 Ⅵ.行政等に期待する施策や支援(自由回答)
5.回答企業数:製造業36 社、非製造業114 社、合計150 社( 回答率40.1%)


【要 約】

○県内経済へのプラスの効果(複数回答)
 「観光客やビジネス客が増加する」が78.0%(117 社)と群を抜き、これに「交通の利便性が向上する」が42.7%(64 社)、「地場産業の再生・振興につながる」が24%(36 社)で続く。
○県内経済へのマイナスの効果(複数回答)
 「消費の県外流出につながる」が34.2%(50 社)、「人材・人手の確保が難しくなる」が11.6%(17社)であった。
○県内経済の活性化策(複数回答)
 開業を県内経済の活性化につなげるために重要なこととして、「観光客の県内各地や九州各県への周遊促進」(56.7%、85 社)、「観光資源の掘り起こし」(52.0%、78 社)、「二次交通の整備」(45.3%、68 社)の3 つが上位を占めた。
○経営への影響
 「大いにプラス」が10.9%(16 社)、「多少プラス」が40.8%(60 社)となり、これら「プラス」と回答した企業は51.7%(76 社)であった。
○新幹線の開業を契機として着手した事業・今後取組む事業(複数回答)
 開業を機にはじめた事業では、「新商品・サービスの開発」が12.0%(17 社)、「市場調査・情報の収集」が7.0%(10 社)など。一方、「特にない」が78.9%(112 社)となった。
また、今後取組む事業としては、「新商品・サービスの開発」(15.3%、22 社)、「市場調査・情報の収集」(11.8%、17 社)、「新規取引先の開拓」(8.3%、12 社)など。
○行政等に期待する施策や支援(自由回答)
 フル規格を求める意見のほか、二次交通の整備や、観光客の周遊が高まる施策など。


Ⅰ.西九州新幹線開業による県内経済へのプラスの効果(複数回答150 社)
  ―「観光客やビジネス客の増加への期待」が約8 割と最多―

 はじめに、西九州新幹線の開業により県内経済にどのようなプラスの効果が期待されるか複数回答で尋ねたところ、「観光客やビジネス客が増加する」が78.0%(117 社)と群を抜き、以下、「交通の利便性が向上する」が42.7%(64 社)、「地場産業の再生・振興につながる」が24.0%(36 社)、「商圏が拡大する」が18.7%(26 社)となった。一方、「プラスの影響はあまりない」が16.7%(25 社)であった。
 回答の理由としては、「西日本方面からのアクセス向上によって観光業が盛り上がることを期待」(運輸業、長崎市)や、「時間短縮効果より人流増加を期待」(卸売業、長崎市)、「観光客やビジネス客が増加するのは間違いないと思うが、一過性に終わらせない努力は必要」(卸売業、長崎市)などのコメントが寄せられた。

Ⅱ.開業による県内経済へのマイナスの効果(複数回答146 社)
  ―「消費の県外流出懸念」が3 割強―

 次に、開業により県内経済にどのようなマイナス面の影響があるか複数回答で尋ねたところ、「消費の県外流出につながる」が34.2%(50 社)と最多。以下、「人材・人手の確保が難しくなる」が11.6%(17社)、「交通の利便性が低下する」と「県外企業の拠点等の撤退・縮小につながる」が同率の11.0%(16社)となった。
 もっとも、「マイナスの影響はあまりない」が45.2%(66 社)に上り、マイナス面への懸念は限定的であった。
 マイナス面の理由としては、「ストロー現象で福岡への消費流出が懸念される」(小売業、佐世保市)や「福岡への人口流出が加速することが懸念される」(小売業、長崎市)などのコメントが寄せられた。

Ⅲ.開業による県内経済活性化策(複数回答:150 社)
  ―「観光客の周遊促進」や「観光資源の掘り起こし」が半数超―

 新幹線開業を長崎県の活性化につなげるにはどのようなことが重要だと考えるか複数回答で尋ねたところ、「観光客の県内各地や九州各県への周遊促進」が56.7%(85 社)、「観光資源の掘り起こし」が52.0%(78 社)、「二次交通の整備」が45.3%(68 社)となり、上位を占めた。そのほかでは、「中心市街地の活性化」が32.7%(49 社)、「快適に滞在できる環境づくり」が32.0%(48 社)と比較的多かった。

Ⅳ.経営への影響  ―経営にプラスが半数超―

 新幹線開業によって自社の経営にどのような影響があるかを尋ねたところ、「大いにプラス」が10.9%(16 社)、「多少プラス」が40.8%(60社)となり、これらを合わせると、半数超の51.7%(76 社)が経営にプラスの効果があると回答した。一方、「影響はない」も45.6%(67 社)に上った。
 自由意見では、「新幹線が通じているというインパクトは強く、良い影響を及ぼすと考える」(製造業、諫早市)といった内容や、「フル規格でないと意味がない」(卸売業、長崎市)などのコメントが寄せられた。

(注)県央・県南地域は、長崎市、島原市、諫早市、大村市、雲仙市、南島原市、長与町、時津町、東彼杵町、川棚町、波佐見町                                                
   県北・離島地域は、佐世保市、平戸市、松浦市、対馬市、壱岐市、五島市、西海市、小値賀町、佐々町、新上五島町

 これを地域別にみると、県央・県南地域では「大いにプラス」が13.6%(16 社)、「多少プラス」が44.1%(52 社)となり、これらを合わせた『プラスの影響』は57.7%(68 社)と約6 割に上った。
 一方、県北・離島地域は、「多少プラス」が27.6%(8 社)にとどまった一方、「影響はない」が69.0%(20社)と約7 割を占めた。

 また、業種別にみると、「大いにプラス」と「多少プラス」を合わせた『プラスの影響』が高かったのは、運輸業(62.9%、18 社)、サービス業(60.0%、9 社)、製造業(58.4%、21 社)などであった。
 このうち運輸業では「新幹線開業効果により、交流人口が増えれば、乗車人数の増加に期待できる」、サービス業では「サービスの利用者の増加が期待できる」といった意見が寄せられた。
 一方、小売業では「多少プラス」が38.5%であった一方、「多少マイナス」が15.4%と「ストロー効果」を懸念する意見がみられた。建設業では「影響がない」という回答が72.7%(8 社)に上った。

Ⅴ.新幹線開業を機に取組んでいること・今後取組むこと(複数回答)

1)新幹線開業を機に取組んでいること

 幹線開業を契機として取組んでいることについて複数回答で尋ねたところ、「新商品・サービスの開発」が12.0%(17 社)、「市場調査・情報収集」が7.0%(10 社)、「設備投資の実施」が4.9%(7社)であった。もっとも、「特にない」との回答が78.9%(112 社)に上る。
 具体的内容では、「新幹線関連の土産商品を販売中」(卸売業、長崎市)、「長崎市にとどまらず、さらに五島列島へ足を運んでいただく商品開発を行う」(運輸業、長崎市)などが挙げられる。

(2)新幹線開業を機に今後取組むこと

 また、今後取組むことを複数回答で尋ねたところ、「新商品・サービスの開発」が15.3%(22 社)、「市場調査・情報収集」が11.8%(17 社)、「新規取引先の開拓」が8.3%(12 社)であった。一方、「特にない」との回答が66.7%となっている。
 具体的内容としては、「新製品開発に取組む」(卸売業、大村市)や、「新たな旅行プランを企画する」(運輸業、長崎市)などのほか、「長崎へのU ターン希望者の増加を見込み採用活動に取組む」(卸売業、長崎市)などを挙げる企業がみられた。

Ⅵ.行政等に期待する施策や支援

 新幹線開業に当たり、行政等に対し、ビジネス環境の改善や経済活動の活発化に向けて期待する施策や支援を自由回答で尋ねたところ、主な回答は以下のとおりであった。

■全線フル規格(注1)への期待

(注1) 全線フル規格となった場合、新大阪から長崎までの所要時間は3 時間、広島からは約2 時間と試算されており、一層の利便性の向上や商圏の拡大などの大幅なプラス効果が期待されている。

・早期のフル規格化を望む。(製造業、長崎市)
・直通方式の大至急実現。(建設業、長崎市)
・ 新幹線乗り継ぎではなく直通の新幹線でお願いしたい。(卸売業、長崎市)
・ フル規格でなく、料金、所要時間を考えるとバスの利用が増えるのではないか。その対策が必要。(卸売業、大村市)
・ 長崎市の観光が活性化する上で、早期の全線開通が望まれる。一方で佐賀県が反対する理由が良くわからない。交通の利便性が向上すれば、佐賀県もメリットが出てくると思う。(小売業、佐世保市)
・ 武雄より先の新幹線の整備が重要。(運輸業、島原市)
・ 長崎県経済及び、周辺県経済発展のため、一日でも早いフル規格整備が必要。(サービス業、時津町)

■インフラ等の整備

・駅周辺施設の建設促進。(卸売業・長崎市)
・ 新幹線はもとより市内幹線道路などのインフラ整備をさらに進めていくべき。長崎佐世保間の移動時間はもっと短縮すべき。(卸売業、長崎市)
・ 新長崎駅におけるスムーズなバス、タクシー、自家用車の流れを確保できるよう東口ロータリー内の各種機能の配置、東口ロータリーと国道の結節、西口の活用と旭大橋側の浦上幹線への直進による合流などの道路整備をお願いしたい。また、新大村駅と長崎空港間の輸送と新大村駅前の観光客向け施設の充実をお願いしたい。(運輸業、長崎市)

■二次交通の整備

・ 新幹線と連携した観光客の増加策。島原半島の交通手段、道路整備が必要と思う。(製造業、島原市)
・ 駅から宿泊施設へのアクセスをスムーズにした方が良いと思う。(運輸業、長崎市)
・ 利用者目線に立った、二次交通網の再整備が必要になると考える。(卸売業、大村市)
・ 来訪者に分かり易く便利な二次交通の整備は重要課題と思われる。(小売業、長崎市)

■その他

・ 波佐見町においては佐賀県との連携を進めたいと思う。日本遺産の取組みも含めて、両県と地域の話し合いの場を作ってほしい。(製造業、波佐見町)
・ 観光の振興や外部の資本を呼び込む施策が必要。(製造業、諫早市)
・ 各種イベントを切れ目なく企画し、来崎誘致に尽力してもらいたい。また、期間限定で県民への割引切符等の販売(特に未成年者への優遇)。(建設業、長崎市)
・ 長崎市外( 県外) への人口流出の抑止、市内( 県外) への企業誘致。(運輸業、長崎市)
・ 全県に良い効果がおよぶ施策に取り組んで欲しい。(運輸業、大村市)
・ 周遊性が高まるよう、本当に役立つ市内案内板等の充実を進めて欲しい。(小売業、長崎市)
・ マスメディアへの露出アップを期待している。(サービス業、長崎市)
・ 人を呼び寄せられる企業の誘致をパフォーマンスだけで終わらせず形にしていただきたい。(サービス業、島原市)

おわりに

 西九州新幹線の開業は、全国から本県に目を向けてもらう好機である。多くの観光客に本県をはじめとして西九州エリアを周遊してもらうためには、二次交通の整備を進めていくことが望まれている。また、長崎駅の駅前広場やホテルを含め、周辺の一体的な整備事業が今も進められている。開業は地域活性化の通過点と言え、全線フル規格の早期実現が期待される。
 さらに観光消費額を増加させ、地域にもたらす経済効果を高めるためには、インフラの整備と同時に来県者にリピーターとなってもらえるよう、おもてなしや受入体制の整備を進めていくことが望まれる。

(2022.10.14 泉 猛)

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