ながさき経済web

長崎経済研究所

第129 回 県内企業景況調査(確報)

 当研究所では、県内の景気動向を探るため四半期毎に県内企業景況調査を行っています。このほど、2022 年8 月に実施した調査結果を下記のとおりとりまとめました。
 ご多用のなかご回答頂きました皆様に厚くお礼申し上げます。

※2022年9月9日掲載の速報版に調査要領を追加いたしました。


【調査要領】

1.調査目的:県内企業の業況と経営動向の把握および県内景況判断資料の作成
2.調査対象:県内主要企業374 社(回答企業数251 社、回答率67.1%)
3.調査方法:WEB と郵送を併用しアンケートを実施
4.調査期間:2022 年7 月28 日~ 8 月31 日
5.調査対象期間:2022 年4 ~ 6 月期   実   績(前年同期比)
         2022 年7 ~ 9 月期   実績見込み(前年同期比)
         2022 年10 ~ 12 月期  見 通 し(前年同期比)
6.調査事項
 (1)業況判断     (2)売上高   (3)受注残高    (4)在庫水準
 (5)操業度・稼働率  (6)雇用人員  (7)販売価格    (8)仕入価格
 (9)採算(経常利益) (10)資金繰り  (11)経営上の問題点
7.回答企業属性

BSI について
 BSI はビジネス・サーベイ・インデックス(Business Survey Index)の略で、回答企業の「好転・増加・上昇」とする企業割合から「悪化・減少・下落」とする企業割合を差し引いた指標のことである。例えば回答企業のうち30%で業況が好転し、10%の企業が悪化した場合、BSI の値は30 − 10 = 20となる。BSIのプラスは好転、マイナスは悪化とみることができる。

概況

○全産業の業況判断BSI をみると、2022 年4 ~ 6 月期実績は0 となり、前期(△ 12)から回復。足もと7 ~ 9 月期(実績見込み)は、新型コロナ第7 波(注1)の影響や、原材料・資材価格の高止まりに、円安による輸入物価の上昇が加わりBSI は△ 5 と悪化。先行き10 ~ 12 月期については、新型コロナの落ち着きや西九州新幹線の開業効果への期待などから△ 2 と幾分持ち直す見通し。
○経営上の問題点(3 つ以内の複数回答、全産業計)は、「仕入商品又は原材料価格の値上がり」が65.7%とトップ。これに「人材不足」が45.3%、「売上・受注の不振」が40.0%で続く。
 (注1)長崎県内での新型コロナ感染確認者数は、2022 年8 月18 日に4,610 人と過去最多となった。


1.業況判断

 全産業の業況判断BSI をみると、2022 年4 ~6 月期実績は0 となり、前期(△ 12)から回復。足もと7 ~9 月期(実績見込み)は、新型コロナ第7 波の影響や、原材料・資材価格の高止まりに、円安による輸入物価の上昇が加わりBSI は△ 5 へと悪化するものの、10 ~12 月期先行きについては、コロナの落ち着きや西九州新幹線の開業効果への期待などから△ 2 となり、幾分持ち直す見通し。

(1)製造業

 製造業の業況判断BSI は、22 年4 ~ 6 月期実績が前期(△ 8)から16 ポイント上昇の8 まで上昇した。もっとも、7 ~ 9 月期は0、10 ~ 12 月期も1 と低下しており、円安による輸入物価の一段の上昇懸念が強く、回復の足取りは一進一退の見通し。
 このうち電気機械は、半導体や部材等の調達難など供給制約の影響を受けるなか、価格高騰分を製品価格に転嫁し、BSI は7 ~ 9 月期、10~ 12 月期はともに33 と好調が続く見通し。
 食料品は、修学旅行生が戻るなど観光需要の回復傾向を受けて、BSI は7 ~ 9 月期11 とプラス圏となったが、エネルギーや原材料の価格高止まりによる一層のコスト増もあって、先行き10 ~12 月期については0 まで低下の見通し。

(2)非製造業

 非製造業の業況判断BSI は、22 年4 ~ 6 月期実績が前期(△ 13)を上回る△ 2 となった。新型コロナ第7 波の影響を受け7 ~ 9 月期実績見込みは△ 7 とやや低下も、先行き10 ~ 12 月期は△ 3 となり持ち直す見通し。
 このうち小売業では、コロナの状況次第ながら客足の回復期待から、4 ~ 6 月期△ 32、7 ~ 9月期は△ 24、10 ~ 12 月期も△ 4 と持ち直す見通し。こうしたなか、営業力強化や、生鮮食品での簡便商品の提案、価格ではなく付加価値をアピールするなど営業力強化の動きがみられる。
 サービス業では、4 ~ 6 月期実績3 から、足もと7 ~ 9 月期9 へ回復したが、先行き10 ~ 12月期は、燃料費や電気代などの高騰に加え、10月以降の最低賃金の引上げの影響から△ 3 と悪化の見通し。

2.雇用人員、仕入・販売価格

 全産業の雇用人員のBSI をみると、足もと7~ 9 月期△ 33、先行きも10 ~ 12 月期△ 34 と、大幅マイナス(人員不足)の見通し。
 全産業の仕入価格のBSI は、燃油費や資材・原材料費が高騰したことから、7 ~ 9 月期68、10 ~ 12 月期63 と大幅なプラス(上昇> 低下)が続く。
 一方、全産業の販売価格のBSI は、足もと・先行きともに28 と、仕入価格上昇分を販売価格に転嫁する動きが見られる。ただし、十分な転嫁はできていないことなどから、採算BSI は7 ~ 9 月期△ 20、10 ~ 12 月期△ 17 と、依然厳しい収益環境が続く見通し。

3.経営上の問題点

 経営上の問題点(3 つ以内の複数回答、全産業計)は、「仕入商品又は原材料価格の値上がり」が65.7%でトップ。次いで前回第3 位だった「人材不足」が45. 3 %で2 位。3 位は「売上・受注の不振」で前回の49.8%から40.0%に下がった。
 そのほかでは、「人材不足」、「設備の老朽化」、「賃金の上昇」(注2)などが前回を上回った。
 回答企業からは、「物価は上昇しているが、景気は好調とはいえず、コスト高に対応することが難しい」(一般機械)、「原材料費の高騰により仕入価格の上昇が続いており取引先に商品値上げの対応を行った」(陶磁器)、「賃金アップと原価・販管費の高騰を克服するために売上高アップが課題」(旅館・その他宿泊所)などのコメントが寄せられた。
 (注2)長崎県の最低賃金は、821 円から32 円引上げられ853 円に改定された。引上げ幅は過去最大。2022 年10 月8 日より適用。

(2022.10.14 泉 猛)

■経営上の問題点 (3つ以内 複数回答)

この記事は参考になりましたか?

参考になったらシェアお願いします!
メールマガジン登録・解除はこちらから
メールマガジン登録/解除
«
»
Copyright © 2021 株式会社 長崎経済研究所 All Rights Reserved.

ページトップ