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長崎経済研究所

長崎の物価水準 ~消費者物価地域差指数より~

 このところ、物価が上昇傾向(※1)にありますが、長崎県の物価水準は他県に比べて高いのでしょうか、それとも低いのでしょうか。総務省が地域別の物価を明らかにすることを目的に作成した「消費者物価地域差指数」(※2)からレポートします。


※1:長崎市の消費者物価指数(2020年=100)は、2022年の年平均102.2から2023年の年平均は105.4に上昇。2024年9月は109.2。

※2:各地域の物価水準を全国平均=100とした指数値で示したもの。小売物価統計調査(構造編)をもとに毎年作成しており、本稿が参照するのは2023年の結果。

■全国の状況(図表1)


(1)物価水準(総合)が高い県・低い県

① 物価水準(総合)が最も高い都道府県は東京都(104.5)で11年連続の1番。次いで神奈川県(103.1)、北海道(101.7)の順です。一方、最も低いのは鹿児島県(95.9)、次いで宮崎県(96.1)、群馬県(96.4)の順です。


② 東京都や神奈川県、北海道という大都市圏の物価水準が高いことは理解しやすいものと思われます。ただし、愛知県や福岡県などが30番台以降ということも勘案すると、大都市を擁するから物価指数が高いとは一概にいえないようです。


③「最も高い都道府県(この場合は東京都)」÷「最も低い都道府県(同、鹿児島県)」(以下、都道府県間比率)は1.09倍で2022年と同率でした。

注 :全国平均=100とした指数。

出所:消費者物価地域差指数(総務省)


④ 地方別にみると、最も高いのは「関東」(101.8)、最も低いのは「九州(沖縄県を除く、以下同じ)」(97.3)でした。


(2)10大費目別(※3)にみた物価水準

① 費目別にみると、物価水準(総合)が高い東京都と神奈川県は「住居」が最も高く、次いで「教育」となっていますが、北海道は「光熱・水道」が最も高くなっています。一方、物価水準(総合)が低い鹿児島県は「被服及び履物」、宮崎県は「教養娯楽」、群馬県は「教育」が最も低くなっています。このように、総合指数を高くしている(低くしている)要因となる費目は様々です。


② 都道府県間比率が最も高い、つまり格差が大きい費目は「住居」(東京都÷石川県)と「教育」(和歌山県÷富山県)の1.57倍。逆に最も低い、つまり格差が小さい費目は「保健医療」(高知県÷宮崎県)と「交通・通信」(東京都÷岡山県)の1.05倍です。

※3:住居、食料、光熱・水道、家具・家事用品、被服及び履物、保健医療、交通・通信、教育、教養娯楽、諸雑費。


■長崎県の物価水準(図表2、3)

(1)長崎県の物価水準(総合)は高い方から27番目、九州では2番目

 長崎県(98.8)の物価水準(総合)は、全国的には高い方から27番目と中位程度ですが、九州では高い方から2番目です。九州で最も高いのは熊本県(22番目、98.9)、次いで長崎県ですが、それ以外はいずれも40番台で、福岡市と北九州市という2つの大都市を擁する福岡県も43番目です。


(2)長崎県は「食料」、「光熱・水道」、「被服及び履物」、「保健医療」で全国を上回る

 10大費目別にみると、「食料」(100.6)、「光熱・水道」(105.1)、「被服及び履物」(102.9)、「保健医療」(100.2)の4費目が100を超えており、このうち「光熱・水道」と「被服及び履物」は九州平均を約7ポイント上回っています。



 「光熱・水道」についてみると、九州は全般的に電気料金が安く長崎も同じです。しかし、水道料金は(とくに長崎市など)水源が少ないことや坂道が多いことなどから水道施設の整備や管理に費用が嵩み水道料金が高いため、この費目の水準を高めているものと考えられます(※4)。


※4:「小売物価統計調査(動向編)」(総務省)によると、長崎市の電気料金(2023年の年平均・1か月当たり、九州各市は同額)は10,992円で関西(10,624円)に次ぐ低水準。水道料金は、長崎市が4,515円で県庁所在地のなかでは最も高い(2023年の年平均・1か月当たり)。


 また、「被服及び履物」については、全国で高い方から8番目で九州では1番です。この費目は、都道府県間比率が1.27倍という、格差が大きい費目です。地方別にみると、九州は最も低い水準で、7県中4県は40番台です。そのなかで上位にあるのは長崎県と佐賀県(102.7)のみとなっています(※5)。


※5:「小売物価統計調査(動向編)」(総務省)で費目を細かくみると、「婦人用着物」(349,000円、県庁所在地で高い方から12番目)、「婦人用帯」(195,600円、同7番目)、「婦人用コート」(52,565円、同3番目)など高額な女性ものの品目の物価水準が全国的にも高く、その他のものも総じて高め。


 一方、全国平均と九州平均のいずれも下回っている費目は、「教育」(87.2)と「諸雑費(理美容サービス・用品、身の回り用品、その他)」(94.0)の2費目でした。このうち「教育」は九州で最も低い水準で、全国でも低い方から6番目です。

出所:消費者物価地域差指数(総務省)より当社作成

 
 このように、長崎県の物価水準は全国比さほど高くはありませんが、九州のなかでは高い水準にありますし、全国平均を超えている費目も少なくありません。ただし、実質的な、あるいは体感としての物価高・物価安は、収入など家計の状況などによって違ってくるものと考えられます。


(2024.11.19 宮崎 繁樹)

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