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長崎経済研究所

原材料・仕入価格上昇の影響
~県内主要企業アンケート~

 2022 年2 月の国内企業物価指数(速報)は、前年同月比9.3%の上昇となり、1980 年12 月(10.4%)に迫る上昇率となった。こうした状況が県内企業の経営にどのような影響を及ぼしているのかを探るため、当社では県内主要企業に『原材料・仕入価格上昇の影響に関するアンケート』を実施した。

※図表1 をみると、22 年1 月の消費者物価指数は0.5%の上昇と小幅に止まっている一方、コロナ禍からいち早く回復した海外経済の影響を受け、コンテナ不足や物流の混乱、半導体・部品の供給不足のほか、メタルショックやウッドショックと呼ばれるような原材料・仕入価格の高騰など、複合的な要因から国内企業物価指数が急上昇している。

                    【調査概要】
1.調査対象:景況調査対象先のうちメールアドレスの登録がある329 社
2.調査方法:Web アンケート
3.調査期間:2022 年2 月10 日(木)~ 2 月24 日(木)
4.調査事項:Ⅰ.原材料・仕入価格の上昇による経営への影響
        (1)原材料・仕入価格上昇の内容   (2)原材料・仕入価格上昇への対策
       Ⅱ.価格転嫁について
        (1)価格転嫁の状況   (2)価格転嫁を行わない理由
       Ⅲ.今後の原材料・仕入価格の見通し
       Ⅳ.原材料・仕入価格の動向や対策、行政等への要望(自由回答)
5. 回答企業数:製造業37 社、非製造業83 社、合計120 社(回答率36.5%)
 (注) 業種・企業名を任意回答としたため、未記入の場合等は集計上「その他」とした。

                     【要約】

〇原材料・仕入価格の上昇による経営への影響
「影響が大きい」とする企業が50.8%(61 社)、「ある程度影響がある」が32.5%(39 社)、合わせると『影響がある』企業は83.3%(100 社)に上った。
〇原材料・仕入価格上昇の内容(複数回答)
「材料費の上昇」が72.0%(72 社)、「燃料費・エネルギー価格の上昇」が69.0%(69 社)となり、この2 つが群を抜く。これに「製品・商品価格の上昇」が35.0%(35 社)で続く。
〇原材料・仕入価格上昇の対策(複数回答)
「経費の削減」が67.0%(67 社)、「販売価格への転嫁」が65.0%(65 社)と主要な対策になっており、これに「仕入先との交渉」が54.0%(54 社)で続く。
〇価格転嫁の状況
価格転嫁をした企業に、仕入れ価格上昇分をどの程度転嫁したか尋ねたところ、「10%未満」が32.8%(21 社)で最多、次いで「10%~ 30%未満」が26.6%(17 社)。3 割未満しか価格転嫁でき
ていない企業が59.4%(38 社)と約6 割。
〇価格転嫁を行わない理由(複数回答)
価格転嫁を行わない企業にその理由を尋ねたところ、「他社との競争のため」が最も多く54.3%(19社)、次いで「販売先との関係維持のため」40.0%(14 社)、「価格交渉が困難であるため」34.3%(12社)など。
〇今後の原材料・仕入価格の上昇・高止まり傾向の見通し
「半年程度」が22.8%(26 社)、「1 年程度」が21.9%(25 社)、「数年」が14.0%(16 社)。「見通しが立たない」も35.1%(40 社)あり、短期での収束は見通しにくいとの見方が多い。
〇原材料・仕入価格の動向や対策、行政等への要望(自由意見)
行政等への要望として、「補助金」の新設や限度額の引き上げ、税額軽減を求める意見が多い。また、「値上げ=悪というイメージを官民そろって解消していかなければならない。」といったコメントも。


.原材料・仕入価格の上昇による経営への影響
 はじめに、足もとの原材料・仕入価格の上昇による経営への影響について尋ねたこところ、「影響が大きい」とする企業が50.8%(61 社)、「ある程度影響がある」が32.5%(39 社)となり、合わせると『影響がある』との回答企業は83.3%(100 社)と8割超に上った(図表2)。

 これを業種別にみると、製造業が97.3%(36 社)、建設業が100%(12 社)、運輸業が84.6%(11 社)であった(図表3)。一方、小売業は64.2%(9 社)、サービス業も57.1%(8 社)にとどまった。

(1)原材料・仕入価格上昇の内容
 前問で、「影響が大きい」、「ある程度影響がある」と回答した企業100 社を対象に、その影響の内容を複数回答で尋ねたところ、「材料費の上昇」が72.0%(72 社)、「燃料費・エネルギー価格の上昇」が69.0%(69 社)となっており、この2 つが群を抜く。これに「製品・商品価格の上昇」が35.0%(35社)で続く。
 業種別にみると、製造業や建設業では「材料費の上昇」、運輸業や建設業では「燃料費・エネルギー価格の上昇」の割合が高かった(図表4)。


(2)原材料・仕入価格上昇への対策
 さらに、「影響が大きい」、「ある程度影響がある」と回答した企業に、その対策を複数回答で尋ねたところ、「経費の削減」が67.0%(67 社)、「販売価格への転嫁」が65.0%(65 社)となっており、この2 つが主要な対策となっている。これに、「仕入先との交渉」が54.0%(54 社)で続き、以下、「経営の合理化」が34.0%(34 社)、「仕入先の変更」が10.0%(10 社)であった(図表5)。

Ⅱ.価格転嫁について
(1)価格転嫁の状況
 前問で「販売価格に転嫁」を実施と回答した65 社を対象に、原材料・仕入価格上昇分の何%程度を販売価格に転嫁したかを尋ねたところ、「10%未満」が32.8%(21社)で最多。これに「10%~ 30%未満」26.6%(17 社)、「30%~ 50%未満」18.8%(12 社)と続く(図表6)。一方、80%以上は7.8%(5 社)、100%は4.7%(3 社)にとどまった。
 価格転嫁を実施しても、仕入価格上昇分の3 割未満しか転嫁できていない企業が約6 割を占めた。

(2)価格転嫁を行わない理由
 一方、「販売価格に転嫁」を選択しなかった35 社を対象に、その理由を複数回答で尋ねたところ、「他社との競争のため」が54.3%(19 社)と半数超を占め、以下、「販売先との関係維持のため」が40.0%(14社)、「価格交渉が困難であるため」が34.3%(12 社)であった(図表7)。
 このように、コロナ禍が長期化するなか、価格上昇分を自社で負わざるを得ない企業や、価格転嫁が出来てもわずかという企業の割合が高く、また、他社との競合や販売先との関係維持のため、価格転嫁を行いたくても容易でないことがうかがわれる。

Ⅲ.今後の原材料・仕入価格の見通し
さらに、現在の原材料・仕入価格の上昇・高止まり傾向がどの程度続くかを尋ねたところ、「半年程度」が22.8%(26 社)、「1年程度」が21.9%(25 社)と、ほぼ同率であった。
 また、「数年」との回答が14.0%(16 社)であったほか、「見通しが立たない」も35.1%(40 社)に上った。
 このように、短期での収束は見通しにくく、原材料・仕入価格の高止まりは今後半年から1 年程度は続くとの見方が多い。

 

Ⅳ.原材料・仕入価格の動向や対策、行政等への要望(自由回答)
 行政への要望として、「補助金」の新設や限度額の引き上げ、税額軽減などを求める意見が寄せらたほか、地政学リスクの高まりにより原油価格高騰が続くことや、スタグフレーションを懸念するコメントも寄せられた。
〇値上げ=悪というイメージを官民そろって解消していかなければならないと思う。(製造業)
〇 材料価格が高騰かつ納期通りに入らないため、生産調整が難しくなっている。 さらに働き方改革により労働時間の制限が出ており、顧客対応や売上維持が難しい。 補助金など、要件を見直したうえで採択件数を増やしてもらいたい。(製造業)
〇 原材料・仕入価格は上昇傾向が続いているが、工事価格へのタイムリーな転嫁が難しく収益環境が厳しくなっている。補助金等の新設を検討してもらいたい。(建設業)
〇燃料価格については、ウクライナの状況等今後も不安材料が多く、非常に心配である。(運輸・通信業)
〇 現在のインフレは、スタグフレーションをもたらす悪いインフレであるので、全体が好循環で回転するよいインフレとして成長政策を政策的に成功させてもらいたい。(運輸・通信業)
〇 経済が停滞して値上げが続いている。海外との景気の格差があり、国の早急、適切な対応が期待される。(卸売業)
〇 入札の実施予算化をする際には経年実績を参考にするのではなく、実勢価格を調査の上予算獲得の徹底をお願いしたい。(サービス業)


さいごに
 これまでみてきたように、原材料・仕入価格の高騰が、多くの県内企業にとって負担となっている。仕入価格と販売価格の差は、これまで多くの場合、企業がコスト削減や業務効率化などで吸収してきた。しかし、コロナ禍で厳しい経営環境が続き、これまでと同様の対策では乗り越え続けることが困難となっている。
 また、今後の見通しについても不透明感が強く、コスト削減や効率化を図る自助努力だけでは企業収益の悪化が懸念されることから、行政による補助金等の支援やサポートが必要とみられる。
 コロナ禍が落ち着き、観光関連を中心としたペントアップ需要が顕在化するとともに、経済対策による後押しなどが加わることによって、足もとの困難な状況を乗り越えて回復していくことを期待したい。
                                      (泉    猛)

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