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長崎経済研究所

長崎、今、大変革の時~ Nagasaki Great Revolution ~

  

 長崎自動車株式会社 常勤顧問
     日本銀行元長崎支店長     平家 達史 

プロフィール
昭和40年(1965年)4月15日生。京都市出身。
平成元年(1989年)4月 日本銀行入行。
平成30年(2018年)3月~令和元年(2019年)8月 日本銀行長崎支店長。
令和3年6月に日本銀行を退職し、長崎自動車㈱常勤顧問。
同年7月より㈱長崎経済研究所のシニアアドバイザーも務める。
昭和57年(1982年)の長崎大水害の日に修学旅行に来ていたのが最初の長崎。その後、日本銀行長崎支店に赴任し、修学旅行時には体感できなかった青い海、青い空、美味しい食材を含む豊富な観光資源に感動する一方、この良さをどのようにアピールすべきなのかと思い、「長崎県の観光産業の現状と課題 ― “魅力の宝庫”を“魅力の倉庫”としないために ―」、「長崎県におけるインバウンドの現状と課題」といったレポートを公表。調査、分析、提言だけでなく、実際の観光地づくりの一助になれればと考え、大好きになった長崎を第二の人生の場としてIターン。

 「青い海、青い空、おいしい食材など『魅力の宝庫』である長崎が『魅力の倉庫』にならないように磨きをかけていただきたい」と申し上げた日本銀行長崎支店長の退任記者会見から2年が経ち、長崎に戻ってきました。まずは、暖かく迎えてくださった方々に御礼申し上げます。

 地縁のない私が長崎を第二の人生の場として選んだ理由は、「人」、「変化」、「資源」の三つです。

 まず、「人」ですが、今の延長線上の長崎では衰退する一方であり、何とかしなければならないという方々に多く出会ったことです。長崎を変えなければ衰退する地方都市の一つで終わってしまうという危機意識を持ち、努力されている方々が大勢おられます。こうした方々のお役にたちたいと思ったということです。

 次に「変化」ですが、100年に一度といわれるほど、大きなプロジェクトが同時並行で進んでいます。例えば、「出島メッセ長崎」(MICE)、西九州新幹線、市役所新庁舎、新長崎駅ビルと駅周辺の再開発、スタジアムシティ、松ヶ枝国際観光埠頭の2バース化、県庁跡地の整備等々、枚挙にいとまがありません。国際的な高級ホテルも複数が開業します。国による認定がなされればIR(統合型リゾート)も長崎に大きな変化をもたらすでしょう。ただ、以前、長崎サミットの席上でも申し上げましたが、「“箱庭”をいくつ並べても“庭園”にはならない」ということであり、「点を線に」、「線を面に」していくグランドデザインを描き、それを実行する必要があります。庭園では調和や通路も重要な要素です。また、“作って終わり”は、地方都市でよく見られる残念な光景です。そうしたことにならないために何かできないかと思った次第です。

 最後に「資源」です。歴史・文化、自然、食のどれをとっても、本当に長崎は魅力の宝庫です。ただ、歴史・文化でいえば、西洋・中国の窓口、潜伏キリシタン、幕末・坂本龍馬、産業革命遺産などがあります。これに恐竜を加えても良いかもしれません。自然は、青くきれいな海、47都道府県で一番多い島に加え、かつて外国人の避暑地であった雲仙を始めとする温泉があります。食については、ちゃんぽん・皿うどん、カステラだけでなく、量も多く圧倒的な種類を誇る魚、かんぼこ、野菜、肉類等々、どんな観光客にも満足していただける食材があります。ただ、こうした資源を整理し、観光客や消費者のニーズに合わせて提供することができないかと考えています。

「大変革」、「Revolution」のヒントとしての”Innovation”

 さて、本題に入っていきたいと思いますが、大変革を成功させるためには、そのゴールを設定し、その方法を考えなければなりません。“Revolution”と題しましたが、その意味は「ものごとがある状態から他の状態に急激に変化すること」であり、日本語に訳すと、「革命」、「改革」、「変革」、「転換」、「革新」といった言葉が並びます。その中で、「変革」を選んだのは、その意味するところが「物事を根本から新しく変えること」であるからです。辞書を引くと「変革」の英訳は“Transformation”、“Innovation”となるのでしょうが、ともに技術的な印象が強く、それよりもインパクトの大きなことが長崎で起ころうとしているため、抜本的かつ速やかに対応する必要があるため、敢えて“Revolution”と「変革」を使いました。

 ただ、私の意味する“Revolution”は、技術革新と訳される“Innovation”ではなく、元来の“Innovation”の意味が近いかもしれませんので、まずは“Innovation”についてご紹介します。

 “Innovation”(イノベーション)という言葉は、オーストリアの経済学者であるヨーゼフ・シュンペーター(Joseph Alois Schumpeter)が、1912年に発表した「経済発展の理論」において、「新結合」という言葉を用いて、イノベーションを経済活動の中で生産手段や組織といった要素の組合せを組み替えたり、新たな生産要素を導入することと定義しました。そして以下の5種類のイノベーションを定義しています。

①プロダクト・イノベーション … これまでなかったような新しい製品を開発することで、新たに社会に価値を提供すること。
̶̶ 例えば、スマートフォンやスマートウォッチ、オンラインゲーム、サブスクリプションなど。

②プロセス・イノベーション … 新しい生産や流通の方法の導入により生産性を向上させること。
̶̶ 例えば、トヨタにおける「かんばん方式」、コンビニエンスストアの POS データ分析、ユニクロなどによるSPA(=Specialty store retailer of Private label Apparel、企画、製造から小売まで一貫して実施)など。

③マーケット・イノベーション … 販路の開拓や未開拓の分野への新規参入など、新しい市場を生み出すこと。
̶̶ 将来の顧客になりそうな人々へのアプローチや、既存の事業とは全く異なる分野の事業(製造業の飲食店への進出、BtoBの部品メーカーによるBtoCの家庭用品の製造など)への進出。また、既存商品のバリエーションを増やすのもこれに該当。

④サプライチェーン・イノベーション … 原材料の新たな供給ルートの確保、配送方法の最適化のほか、見向きもされていなかった原材料の活用など資源や原料の供給源を最適化したり、原材料の調達から消費者までの提供までの間のプロセスの効率化すること。
̶̶ 各企業で取り組まれている製造、配送、販売の最適化・効率化の取組み。

⑤オーガニゼーション・イノベーション… 上記の4つのイノベーションを実行するための組織づくり。これができないとイノベーションは起きにくい。組織の再編、社内ベンチャー、業務提携や持株会社化なども、オーガニゼーション・イノベーションのひとつ。
̶̶ 社内に目を向ければ、社員からアイデアを吸い上げる仕組みやそれに経営陣が耳を傾けることといったことも重要。

 一方、シュンペーターは、イノベーションを妨げるハードルとして以下の三つを掲げています。

・経験よりも洞察を必要とするが、経験に頼りがちであること。
・実証されていない新しいことを始める難しさ。
・新しいことを始めることで受ける、社会からの抵抗と批判。

こうしたことを踏まえ、

①新たな欲望を生む魅力を消費者に提示する

②5つのイノベーションをヒントにする

③企業家であり続ける

ことを提唱しています。

 なお、シュンペーターは、イノベーションを起こす経営者のことを企業家と呼んでおり、企業家であることと事業を単に運営することとは別の行為であると区別している点は非常に興味深いです。

ここまでは、これまで見聞きしたことの受け売りですが、これらの“Innovation”を長崎の“Revolution”に引き付けて考えてみます。

長崎に対しての内外ギャップ

 県外の人々の持つ長崎のイメージと私どもが“強み”と思っているものとのギャップを認識し、“長崎の魅力”を県外の人々に知ってもらうことから始めることが大切です。シュンペーターの言葉の中の「新たな欲望を生む魅力を消費者に提示する」に該当します。そこで、長崎の魅力が伝わっているのかどうかについて、県外の人々の持つイメージを見てみます。

 もちろん、一つの調査の結果ではありますが、県外の人々の長崎に対して持つイメージを良く表しているのではないでしょうか。長崎県の象徴要素は「ハウステンボス」、「カステラ」、「ちゃんぽん」で5割以上を占めていますが、ここで注目すべきは、無回答の少なさです。裏返せば、長崎に対するイメージはかなり固まってしまっています。これを変えていくにはかなりの努力が必要です。まさに「大変革」を起こさねばなりません。

 例えば、県内の取組みが活発化している「食のイメージ」についてです。まず、「食」全体のイメージですが、北海道が首位であり、九州・沖縄では福岡県と沖縄県が5位までの中に入っています。

 食材毎にみていくと、まず水産物やかんぼこを含む水産加工品ですが、水産物は水産県のイメージが定着している石川県や富山県が、水産加工品では明太子が全国区である福岡県がランクインしている一方、長崎県はランクインしていません。

 もっとも、漁獲高(海面漁業漁獲量+海面養殖業収穫量)でみると、対象39都道府県中、長崎県が3位[1]である一方、石川県は25位、富山県は31位と必ずしも漁獲高が多いわけではありません。

[1] 2019年は、茨城県におけるまいわしの漁獲高が多かったことを主因に同県が2位。2018年、2017年では長崎県が全国2位。

 その鍵は、観光客に如何に食べてもらうかです。北陸の成功は、前述の5つのイノベーションをしっかり実行していたと考えられます。

 「北陸のお魚が美味しい」との評判が定着したこともあり、新型コロナウイルス感染症のまん延前ではありますが、東京に進出した北陸の回転寿司店は連日満員でした。つまり、まずは現地に来て、実際に食べていただくことで評判が定着したと思います。もちろん、北陸新幹線の全通により東京から2時間半から3時間で行けるようになった影響も大きいでしょう。ただ、富山では、約500種の魚が泳ぐ富山湾を天然の生け簀に見立て、“富山湾鮨”という観光客用のカテゴリーを作りました。

 富山湾鮨の内容は、①富山湾産の旬の地魚を使用した寿司10貫、②米どころ富山県が誇る県産米のシャリ、③富山らしい汁物付きを出し、④お客様に提供する際に寿司ネタについて必ず説明を行うということです。天候等の都合でやむを得ず地魚を十分に仕入れることができない場合は、他の産地のもので代替せざるを得ないのですが、その事情も必ず説明することとなっています。この結果、1,000円程度のランチの握り寿司が2,500〜3,850円で提供できるようになりました。現在、富山市内の18店舗、富山市以外の県内では31店舗で富山湾鮨を提供しています。鮨を握るという技術はそのままで、少しの工夫で売上単価が3倍に上がった訳です。労働生産性は「付加価値÷労働投入量」であり、付加価値は「売上高-外部購入費」ですから、労働投入量が一定の下、多少の仕入れ価格が上昇しても、それ以上の売上高が見込めるため、これは生産性の向上そのものです。コストカットには限界がありますが、付加価値には無限の可能性があります。

 5つのイノベーションの考え方で整理すると、“富山湾鮨”という新たな商品を開発し、新しい価値観を提供したという意味で「プロダクト・イノベーション」、付加価値による生産性の向上という意味で「プロセス・イノベーション」、未開拓の分野への参入という意味で「マーケット・イノベーション」、地元の食材を活用するという意味で「サプライチェーン・イノベーション」でしょう。また、この富山湾鮨の提供店の管理・宣伝は(公社)とやま観光推進機構が行っていますが、地元のお寿司屋さんとの協働で富山湾鮨が有効に機能していることを考えれば「オーガニゼーション・イノベーション」と言ってよいのではないでしょうか。

 また、金沢には近江町市場という県内主要産物を「味わう」、「買う」ことができる全天候型の施設があります。朝7:00から深夜23:00まで、金沢の食を楽しめるレストランが営業しており、金沢の食のテーマパークであり、観光客の基地(ベース)にもなっています。こういった施設が長崎に欲しいものです。

 さて、その他の食のイメージも紹介したいと思います。

 旅行者が必ず食べたいと思う「ちゃんぽん」、「皿うどん」ですが、残念ながら他の道府県を上回るには至っていません。長崎県が誇る「食」は数多くありますが、全国区となると、菓子類で漸く5位に長崎県がランクインしているというのが現状であり、なかなか厳しいと言わざるを得ません。長崎県で漁獲できる魚種は全国で1位といわれており、年間を通じて四季折々の旬な魚を数多く楽しむことができます。かんぼこを含め、これを如何にして観光客に食べていただくかという具体策が必要です。

 長崎は本当に“魅力の宝庫”であり、観光地としてのニーズは依然として高いです。ただ、「食」に引き付けると、「カステラ」、「ちゃんぽん」の次、もしくはそれに並び、それを超える「食」が認識されていないのはイメージ調査の結果が物語っています。

 以下に掲げた別の調査をみても、長崎県は「旅行で行きたいと思う」都道府県の上位にランクインしていますが、「美味しいグルメを味わいに行きたい」都道府県の上位には入っていません。ここで興味深いのは、「美味しいグルメを味わいに行きたい」都道府県の上位に入っている石川県や富山県では、「食べ物の美味しさ」が自慢の都道府県の上位にも入っていることです。長崎の皆様にも是非、長崎の「食べ物の美味しさ」を自慢していただき、それが広まって長崎の食べ物が観光の目的の一つになるようになればと思います。長崎の皆様にとっては当たり前なのかもしれませんが、長崎以外の方々からすれば本当に長崎の食べ物は美味しいのです。

「大変革」、“Revolution”を成功させるために必要なもの

 今回は「食」を具体例にしていますが、観光地や自然についても同じようなことが言えます。したがって、まずは長崎の魅力を今一度“棚卸し”することが必要です。一方で、観光客の要求を徹底的に分析(洞察)し、ストーリーを再構成することが望まれます。ストーリーを明確化することなく、やみくもに、そしてばらばらに情報発信しても、情報が氾濫しているこの世の中では訴求力は弱いのではないでしょうか。ましてや「長崎には良いものがいっぱいあるので、個々人で勝手に回ってください」というのでは不親切ですし、旅行者に任せているといつまでたっても「ハウステンボス」、「カステラ」、「ちゃんぽん・皿うどん」のままです。これまでの延長線上では他の内外の観光地に負けてしまいます。だからこそ抜本的な「大変革」が必要なのです。

 その解決策の一つは「ワンストップ化」だと考えます。

 まずは、「情報」のワンストップ化です。様々な主体のパンフレットやホームページがあります。もちろん、個々には様々な工夫が凝らされていますが、観光客からすればありすぎて何をみればよいのかわからないという状況です。今のようにインターネット等で簡単に情報が取れなかった時代は旅行雑誌一冊で旅行に出かけていたあの感覚が大切だと思います。情報のワンストップ化が必要なのは長崎に限ったことではないですが、だからこそ長崎が先陣を切って行うべきです。

 次に「予約」のワンストップ化です。最近の旅行は往復の交通手段と宿泊場所は自らインターネットで予約し、現地での活動は個々の目的に合わせて動きます。そこで大切なのは、「着地型観光商品」です。着地型観光商品といっても、ターゲットを細分化し、数多くのメニューを揃える必要があります。例えば、富裕層、女性グループ、若者、MICEに来られるビジネスマン、アジアからの外国人、欧米豪からの外国人等といった主体別に加えて、歴史好き(歴史といっても、西洋・中国の窓口、潜伏キリシタン、幕末・坂本龍馬、産業革命遺産のようにしっかりした色分けが必要)、自然好き、グルメ、体験型、見学型等といった嗜好別にストーリーを整理して構成し、一つを追求するディープな商品といつくかを組み合わせられるライトな商品を用意する必要があります。メニューは豊富に揃え、観光客が自らの興味と持ち時間に合わせて自由に選べるようにしなければなりません。

 そして、「手間」のワンストップ化です。着地型観光商品を組成しても、観光客が手軽にそれを利用できることが必要です。つまり、街のコンシェルジュ機能です。個人で現地の交通手段、飲食、アクティビティをバラバラに手配するのは大変ですし、天候の急変等により変更やキャンセルを行うことはもっと大変です。前述の着地型観光商品の提供も含め、空港や駅、繁華街にワンストップ機能を持つ施設が必要です。従来の観光案内所の延長線上で考えるのではなく、予約機能や荷物の宿泊施設への配送といった顧客目線のサービスの提供は必須です。旅行客の手間が減れば、その時間を観光地で過ごしてもらうことができ、その分消費も増えます。もちろん、WEBにおいても、ワンストップ化した情報サイトでそのまま予約・決済まで完了させることができなければならないのは言うまでもありません。

 最後に「食」のワンストップ化です。長崎が誇る県産品を集めて提供する“長崎グルメ館”については、長崎サミットでも提案しましたが、まさにこれを作らなければ「大変革」は起きないと考えます。前述のとおり魅力ある食が多い一方、観光客に知られていない状況であるならば、提供する場を作る必要があります。長崎の食の“ショーウインドウ” です。とにかく、食べてもらわないことにはその良さは認識してもらえません。また、長崎の弱い朝と深夜もカバーする必要があります。個人事業主の多い長崎の飲食業の状況を踏まえれば、個々に対応するには限界があります。したがって、朝食や各地からの最終便で長崎入りした観光客に長崎の食をワンストップで味わってもらえる施設を作るということです。

 こうした「ワンストップ化」に取り組むことにより、観光地としてみたときの長崎の弱点をカバーしつつ、これまで十分に伝わっていなかった長崎の魅力を観光客に感じてもらうことは可能だと思います。個別の事業者からみれば、効率的かつ個々で取り組むよりローリスクで訴求することができると考えられます。

必要なのは、地域商社・DMC

 以上のような取り組みは、決して夢物語ではないと考えています。問題は、これらを誰が中心になって担うのかということです。

 その一つの解決策が「地域商社」、「DMC」です。DMCとは、Destination Management Companyの略であり、地域を訪れる観光客に対して実際に旅行商品等を販売する法人です。一方、DMOは、Destination Management/Marketing Organizationの略で、特に日本の場合はブランディングやプロモーションを行うのが主な役割です。今、長崎に必要なのは、実際に着地型商品の組成・販売、交通・宿泊・飲食等の手配、その他ガイドや通訳の手配、こうしたことを調整する機能を持った長崎県域のランドオペレーターとなる「地域商社・DMC」です。「大変革」には実行部隊が必要であり、それが「地域商社・DMC」です。

 交通、宿泊、飲食のどれをとってもサプライヤーは別々であり、それを組織として纏めることは不可能です。もっとも、それをオペレーションの領域でまとめ、個別企業では対応できないことを相互で補完することができれば、個別企業が過大なリスクをとることなく、リターンを増やすことができるのではないでしょうか。

 先の通常国会で銀行法が改正され、銀行の出資や業務に関する制限が緩和されました。例えば、地域活性化事業会社に対して100%の出資が認められるほか、システムやアプリの販売、登録型人材派遣、ビジネスマッチング、顧客データの分析やマーケティングなども可能となりました。

 こうした改正法も活用しつつ、産・官・学・金が協力し、ALL長崎で地域商社・DMCを設立し、具体的な活動を起こすことが「大変革」につながるのです。こうした主体が独占的に利益をあげるのではなく、むしろ長崎の広告・宣伝をワンストップで行うことで、長崎全体が潤うことを目指すということです。そのためには、長崎全体が協働しなければ機能しないと考えます。組織を作っただけ、建物を作っただけでは、何も変わりません。

 100年に一度の変化は長崎にとって絶好の好機なのは言うまでもありません。ただ、100年に一度しかないのであれば「100年後の長崎」を展望したグランドデザインとそれを実現する具体的な政策や施策が必要です。今後、100年間、長崎の経済や長崎の皆様の生活を維持・発展できるようにしなければなりません。これから起こることを「点」のままにしておいては長崎の衰退は止められません。

 いずれにしても、長崎の豊富な魅力を大切にしつつも、これまで長崎で行っていなかった方法によりそれを打ち出すことで、非連続な変化を遂げ、「長崎は変わったよね」、「長崎はすごいね」と県外・海外の人々に思ってもらうようにならなければなりません。

 “魅力の宝庫”である長崎を“魅力の倉庫”としないために。Nagasaki Great Revolution。長崎は今まさに大変革の時です。大変革は天から降ってくるものではありません。受け身ではなく、この大変革に多くの「企業家」が参画すればするほど、より魅力ある長崎に変わっていけると思っています。ゴールは“魅力の宝庫”である長崎に国内外から大勢の観光客が訪れることで、若者を含む皆様の活躍の場が増え、暮らしが豊かになることです。微力ながら私もその一員に加えていただき、具体的な諸施策に取り組んでいきたいと考えています。

【参考図書】

「経済発展の理論 ― 企業者利潤・資本・信用・利子および景気の回転に関する一研究〈上・下〉」(岩波文庫、J.A.シュンペーター著)
「古代から現代まで2時間で学ぶ 戦略の教室 ― 生き抜くための勝利の全法則」(ダイヤモンド社、鈴木博毅著)
[1] 2019年は、茨城県におけるまいわしの漁獲高が多かったことを主因に同県が2位。2018年、2017年では長崎県が全国2位。

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