ながさき経済web

長崎経済研究所

「長崎という”縮図”から考えるプラネタリーヘルス」

― 地域から世界へ、大学が果たす役割 ―

 2026年4月7日、長崎経済同友会において長崎大学の永安武学長をお招きし、基調講演を開催しました。テーマは「長崎という”縮図”から考えるプラネタリーヘルス」。地域社会や世界を取り巻く環境が大きく変化するなか、大学がこれからどのような役割を果たしていくのか。身近な長崎の歴史や事例を交えながら、分かりやすくご講演いただきました。

 講演の冒頭では、長崎が歩んできた歴史や地域の特性について紹介がありました。

 海外との交流の窓口として発展してきた長崎は、異文化を受け入れてきた歴史を持つ一方で、キリシタン弾圧や原爆といった悲しい出来事も経験してきました。さらに、出島を通じた西洋文化の流入や、近代化を支えた産業の発展など、多様な側面をあわせ持つ地域でもあります。

 続いて、「プラネタリーヘルス」という考え方について説明がありました。
 プラネタリーヘルスとは、人の健康と地球環境の健全性が密接に関わっているという視点に立ち、気候変動や感染症、環境汚染などを相互に関連するものとして捉えるものです。
 講演では、気温の上昇に伴い感染症を媒介する生物の生息域が変化していることや、大気汚染物質が健康に影響を及ぼすことなど、具体的な事例が示されました。また、PM2.5やアスベストといった大気環境の問題、さらには海洋プラスチックの増加など、私たちの身近な生活と関わる課題についても言及がありました。
 さらに、「地球の限界(プラネタリーバウンダリー)」という考え方にも触れられ、気候変動や生物多様性の損失など、すでに限界を超えつつある領域がある現状について説明がありました。

(出典:2026年4月7日講演資料より。以下同)

 こうした課題に対し、長崎大学の取り組みについて具体的な説明がありました。
 講演では、「グローバルヘルス」「グローバルリスク」「グローバルエコロジー」の三つの柱が示され、それぞれの分野での研究や人材育成の方向性が紹介されました。
 感染症分野では、熱帯医学研究所をはじめとするこれまでの研究蓄積を基盤に、ワクチン開発や高度感染症研究拠点の整備が進められています。また、気候変動や感染症、さらには紛争などが複雑に関係し合う課題に対応するため、複合的なリスクに対応できる人材の育成を目的とした新たな大学院の設置についても言及がありました。
 さらに、エネルギーや海洋分野においては、洋上風力発電に関する人材育成や、持続可能な養殖業の推進、海藻による二酸化炭素吸収に関する研究など、地域の特性を生かした取り組みが進められていることが紹介されました。

 講演の終盤では、国際連携や地域との関わりについて説明がありました。
 長崎大学は、海外に複数の拠点を設け、各国との研究・教育連携を進めていることが紹介されました。また、地域の企業や自治体と連携しながら、産業振興や人材育成に取り組んでいる点についても言及がありました。
 あわせて、こうした取り組みを支える考え方として、地域に根ざした活動を基盤としながら、その成果を国内外へ展開していく方向性が示されました。
 最後に、大学として社会に貢献していく姿勢について述べられ、講演は締めくくられました。

 本講演では、長崎が歩んできた歴史や地域の特性を踏まえながら、環境問題や感染症といった地球規模の課題について、多角的な視点から説明が行われました。あわせて、これらの課題に対し、大学が研究や人材育成、地域連携を通じてどのように関わっていくのか、その方向性も示されました。

 長崎から新たな価値を生み出し、未来につなげていく可能性について、多くの示唆を得る貴重な機会となりました。

(2026.4.16 長崎経済同友会 村田 聡)

参考になったらシェアお願いします!
メールマガジン登録はこちらから
メールマガジン登録
«
Copyright © 2021 株式会社 長崎経済研究所 All Rights Reserved.

ページトップ