さる3月16日(日)に、「出島メッセ長崎SDGsプロジェクト」の5つのテーマのうちの1つ“アニメ・同人イベント”の一環として『DENDERA㏌出島メッセ長崎』が開催されました。
同様のイベントは、主に東京や大阪などの大都市圏を中心に開催されていますが、今回のイベントは長崎初開催となるアニメ・ゲームの総合イベントで、子どもから大人まで「マニアの集う」場が提供されました。
長崎県内“最大級”のサブカルイベント
会場の出島メッセ長崎は、JR長崎駅西口に直結している好立地施設であり、同会場の2階に4部屋あるコンベンションホールの壁を全て解放した最大級の広大な会場には、県内外からの多くの参加者で賑わいました。
年初のイベント募集開始~2月上旬迄で、早々とコスプレの参加者が100名を突破(当初目標60名)、サークル参加者(自分で作った作品を販売、発表する参加者)もキャパ116ブースに対して100ブース突破と、開催前から盛り上がりを見せており、最終、コスプレ参加者約250名、サークル参加者116ブース(94の出店者)、一般参加者約600名、カメラマン参加者約110名、ポケカ交流会参加者約500名と総勢1,500名を超す参加者が集う過去最大級のサブカルチャーイベントとなりました。
日本におけるアニメやゲームなどの「サブカルチャー」は、1980~90年代に大きなブームを作り出し、2000年代に入って世間一般に広がり、大きく拡大してきました。しかしながら長崎開催のサブカルイベントに、ここまで多くの参加者が集うとは、筆者も正直予想外であり、自身の認識の甘さを痛感しました。
イベントへの参加者
参加者は、大きく分けて5つの形態に分かれてイベントを楽しんでいました。
まず、①アニメ作品やキャラクターについての情報収集や、ファン同士の交流を楽しんだり、同人グッズ・同人誌の購入、展示物の鑑賞、コスプレイヤーの撮影など、イベントそのものの雰囲気を楽しむ「一般参加者」。
②アニメや漫画に基づく二次創作作品やオリジナル作品を創作し、専用ブースで自身の活動や作品を宣伝・販売することを目的とする「サークル参加者」。
③好きなアニメや映画、ゲームなどのキャラクターになりきり、その特徴的な衣装や髪型、メイクなどを再現する。そして、撮影会やコンテスト等に参加して、一般参加者とおしゃべりや写真撮影を行う。そうすることで、参加者同士のコミュニケーションやイベントの盛り上がりに貢献する「コスプレ参加者」。
④コスプレイヤーや展示物、イベントの雰囲気などを写真や映像に収め、SNSや自身のウェブサイトなどでシェアし、イベントの魅力を広く伝えることでお互いの活動の支援や交流を促進する「カメラマン参加者」。
⑤ポケモンカードゲーム好きが集まって、ゲームのルールや戦術について話し合ったり、対戦したりすることを楽しむ「ポケカ交流会参加者」。
このように、当イベントには、それぞれの目的や興味によって参加しており、全ての参加者が一体となってアニメやゲームに関する創作や交流を楽しむ場を創り出していました。
豊富なイベントメニュー
当イベントでは、会場内の通路や階段、屋上などを利用したコスプレ撮影会、および秋葉原から参加したコスプレイヤーによるパフォーマンス、コスプレ参加者によるコスプレランウェイ、アニメソングのカラオケ大会など、各種イベントがタイムスケジュール通りにテンポよく進行していき、カメラのフラッシュが途切れませんでした。
会場の中央付近には飲食ブースも設けられており、地元・長崎を中心に7つの飲食店が、カレーやクロワッサンサンド、チュロス、スイーツ等と豊富なメニューを提供して、参加者が1日中会場内で楽しむ事ができる工夫が感じられました。
サークル参加者による同人グッズ等の販売専用ブースでは、アニメの二次創作物やオリジナル作品など、多様なジャンルやテーマの作品が展示・販売されており、何冊もの同人誌を腕に抱えた一般参加者が、サークル参加者とアニメ談義等で盛り上がるなど、で大変賑わっていました。
アニメの同人イベントは、アマチュアのクリエイターやファンが自分の作品を発表し、他者と交流する場として重要な場所になっています。筆者もお気に入りのアニメ「ONE PIECE」の同人誌(二次創作物)を見つけて早速購入してみましたが、オリジナルの要素が強い別展開の物語に触れることができて、作品の新たな世界観を感じることができました。
「和華蘭文化」を活かし、人流を長崎へ
日本のアニメやゲームは、子ども向けの作品から大人向けの作品まで幅広いジャンルを網羅していることもあり、独自の文化として発展した結果、現在では世界中で多くのファンに支えられており、日本文化の象徴とも言える存在となっています。
今回、筆者がイベントに参加して感じた事は、アニメ好きの人たちが集まった時の底知れぬパワーです。それぞれの参加者が、キャラクターグッズの収集やオリジナルグッズの制作・販売、コスプレ参加や撮影会などを通じて、共通の趣味や作品に対する情熱を分かち合い、参加者同士の新たな出会いや繋がりを作り上げており、全体としてアニメ文化や関連産業の発展を支えていると感じました。
最近では、作品への愛着や感動を更に深めることができる「聖地巡礼」という作品の舞台や背景となった実在の地域を訪れるファンの行動があり人気を集めています。長崎市は鎖国時代に唯一海外との交易の窓口となっていました。そこで育まれた他にはない、日本文化と西洋、中国の文化が混ざりあった「和華蘭文化」という独自の文化が長崎市にはあり、テレビドラマや映画のロケ地としても数多く取り上げられています。
「聖地巡礼」と併せて、この和華蘭文化を生かした“映える場所”でのコスプレニーズは非常に高いのではないかと思います。屋外でのコスプレ撮影は、スタジオ内での撮影に比べよりリアルな空気感を演出できることから、ワンランク上のコスプレ写真を撮ることができます。
世界中のファンに支えられている日本のアニメ・ゲーム文化を、誘客ツールの1つとすべく、今後は長崎県でも“映える場所”でのコスプレ撮影会の開催など、関係者を引き付けるコンテンツ作りが必要でしょう。その結果、長崎ファンを創出し、インバウンドを含めた交流人口が増加して、地域経済へその効果が波及するのではないでしょうか。「アニメ・同人イベント」は、長崎への誘客が期待できる新たな観光資源にも成り得るでしょう。
(2025.4.9 永山 真)