長崎県立大学経営学部国際経営学科 大久保文博ゼミナール4年
長崎海外マーケットリサーチNIMR 浅賀 隆太
本県は、1972年の日中国交正常化の直後に地方自治体として初めて友好訪中団を派遣して以降、長崎・上海定期航空路の運行や長崎県上海事務所の開設、上海市・湖北省と友好関係を樹立するなど、中国との交流が盛んに行われてきた(図表1)。
こうしたなか、今年は上海市との友好関係樹立25周年、湖北省友好関係樹立10周年を迎え、来年は日中国交正常化50周年、福建省友好県省締結40周年の節目の年を迎える。
そこで本稿では、本県の対中貿易の輸出の動向とともに、その取組み事例を採り上げる。
長崎県の貿易収支は、過去42年間継続して黒字となっている。2020年における主要輸出品目は船舶類(84.1%)が最も多く、次いで一般機械(6.2%)となっており、造船関連業が盛んな本県の特徴がよく表れている。
一方、同年の対中輸出品目をみると、一般機器(70.7%)と電気機器(注1)(16.9%)で9割近くを占めている(図表2)。
(注1)世界的な半導体不足を背景に、ソニーグループは長崎県諫早市のソニーセミコンダクタマニュファクチャリング長崎テクノロジーセンターを拡張し、スマートフォンカメラ向け半導体を増産する。日本ではスマホや車載用などに使われるイメージセンサーを本県のほか熊本、大分、山形においても生産しており、スマホ向けに限ると世界シェア57%を占める。
長崎県産品の中国向け輸出額は、年々増加、2018年には20億8百万円と過去最高となった(図表3)。これを品目別にみると、水産品が8割以上を占めており、長崎の水産物の認知度が上がっていることがうかがわれる(図表4)。
こうしたデータを踏まえ、筆者は中国向けに水産物輸出を手掛けている隆原商事株式会社(本社:佐世保市相浦町、代表取締役社長 曹燕氏)にヒアリングを行った。同社はマグロを佐世保近隣のレストランへ卸し、マダイ、アジ、サバなどを家庭用に販売。中国へは鮮魚と冷凍・冷蔵した加工品などを魚種ごとに分けて輸出している。
*鮮魚・・・養殖マグロ、シマアジ、ハマチ、牡蠣などの貝類等
*冷凍・冷蔵・・・ウマズラハギ、タチウオ、サバ、ホタテ等
新型コロナによる影響については、「物品に対するPCR検査などによって通関に遅れが出た。通関に最大2カ月かかる時もあったほか、もしPCR検査で陽性反応が出た場合は廃棄処分されるリスクもあった。輸出量に関して、鮮魚は特に変化がなかったが、冷蔵・冷凍品は減少した」とのことである。
また、曹社長によると、「東南アジアなどにも水産品を輸出しているが、人口が多く経済的にも豊かな中国市場はマグロなどの高級魚が売れることから魅力を感じている」とのことであった。
こうしたことから、地理的に中国に最も近い長崎県では、新鮮な水産物をいち早く中国に向けて輸出できることから、消費者の嗜好に合わせるなどターゲットを絞った鮮魚の輸出をさらに拡大が見込まれる。
本県と中国との交流の歴史は長く、深い。本県の対中水産物輸出は増加傾向にあり、水産物の消費が旺盛な中国向けの輸出は今後も拡大が見込まれる。
本県の水産物を中国でPRするに当たって、外国人留学生や技能実習生の存在は欠かせないだろう。
技能実習生は2,912人に上り、このうち中国からは260人である。(20年10月時点、令和2年度 長崎労働局「外国人雇用状況」)。
また、留学生は1,117人に上り、このうち中国からは499人である。筆者の所属する長崎県立大学にも18人の留学生が在籍し、中国からが11人である。(21年5月時点、長崎留学生支援センターまとめ)
こうした技能実習生や留学生の多くは、帰国後、現地で就職し、長崎で学んだことを活かして活躍している。そうした地元・長崎の魅力を良く知っている卒業生たちに帰国後も長崎とのパイプ役になってもらい、県産品等の長崎の美味しい魚を、現地でPRしてもらうことによって、本県の水産物等の販路・消費拡大に繋げていくことが考えられる。こうしたPR活動などの地道な取組みを広げていくことによって、長崎と中国の交流が益々活発となることを期待したい。
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