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長崎経済研究所

景況感、持ち直し傾向ながら、足もと足踏み
~第125回 県内企業景況調査(確報)~

■調査対象:県内主要企業380社(回答企業数272社、回答率71.6%)
■調査方法:WEBと郵送を併用しアンケートを実施
■調査期間:2021年7月30日~8月31日
■業種別内訳:製造業69社、非製造業203社
※BSIについて:BSIは回答企業のうち「好転・増加・上昇」とする企業割合から「悪化・減少・下落」とする企業割合を差し引いた指標。

概況

全産業の業況判断BSI推移 「好転」-「悪化」

業種別 業況判断BSI推移(直近2年)

業種別 業況判断BSI推移(直近2年)

業種別(細分類)業況判断BSI及び企業割合の推移

1.業況判断

 全産業の業況判断BSIをみると、新型コロナ感染確認者数の増減に左右される状況が続いている。新規感染確認者数が落ち着き、外食や旅行などが再開された2021年4〜6月期実績は△9となり、前期(△30)から改善。足もと7〜9月期(実績見込み)は、感染力の強い変異型ウイルス感染確認者数が増加し、外出自粛の動きが広がった一方、半導体不足や鋼材・木材等の資材の値上がり、燃油高などの影響もありBSIは△13へ悪化。不確実性が依然として高いものの、ワクチン接種の進捗に伴い、いずれペントアップ需要が期待されることから、先行き10〜12月期は△13と横這いの見通し。

(1)製造業

 製造業の業況判断BSIをみると、21年4~6月期実績は△18となり、前回見込み(△37)を上回ったが、7~9月期実績見込みは△19とやや悪化し、前回見通し(△9)を下回った。10~12月期先行きについては△14とマイナス圏ながら持ち直す見通し。
 このうち、輸送機械、一般機械、電気機械などでは、資材の高騰や調達難がみられる。食料品では、国や自治体などの政策による下支え効果はあるものの、コロナ感染確認者数の状況次第で、売上が左右され不透明感が強い。

(2)非製造業

 非製造業の業況判断BSIは、21年4~6月期実績が前回見込み(△15)を上回る△5となった。7~9月期見込みは△11とやや悪化も前回見通し(△14)を上回った。先行き10~12月期については△13とやや悪化する見通し。
 このうち小売業では、ワクチン接種進捗への期待がある一方、感染者数の再拡大により、今後も外出自粛や慎重な消費行動が続くとの見方もある。サービス業においても、コロナ禍の影響による不透明感が強い。

調査項目別BSI

2.売上高

 全産業の売上高BSIをみると、21年4~6月期実績△3から、7~9月期見込み△15へ悪化、先行き10~12月期△12とやや持ち直す見通し。
 足もとでは、巣ごもり需要が一巡するなか、新型コロナ新規感染確認者数が再び増加に転じていることから、外出自粛の影響を受け観光関連の業種を中心に客足が減少。売上高BSIはマイナスが続く見通し。

売上高BSI

前回実績 今回実績 今回実績見込み 次回見通し
2021年
1~3月期
2021年
4~6月期
2021年
7~9月期
2021年
10~12月期
全産業 △ 33 △ 3 △ 15 △ 12
製造業 △ 36 △ 13 △ 26 △ 13
非製造業 △ 31    1 △ 11 △ 12
中小企業 △ 32 △ 6 △ 17 △ 14
大企業 △ 33   24 △ 3   0

3.採算

 全産業の採算(経常利益)BSI をみると、4~6月期実績△10から7~9月期見込み△23、先行き10~12月期△21と幾分持ち直しも、マイナスが続く見通し。
 このうち、仕入価格BSIをみると、燃油、鋼材、木材などの価格上昇の影響から大幅なプラスが続く一方、販売価格BSIは仕入コスト上昇分の価格転嫁が容易でないことから小幅プラスにとどまり、採算BSIはマイナスが続く。また、今年10月の最低賃金引上げによる人件費上昇の影響は大きく、厳しい経営環境が続く見通し。

採算BSI

前回実績 今回実績 今回実績見込み 次回見通し
2021年
1~3月期
2021年
4~6月期
2021年
7~9月期
2021年
10~12月期
全産業 △ 24 △ 10 △ 23 △ 21
製造業 △ 33 △ 27 △ 26 △ 24
非製造業 △ 20 △ 5 △ 23 △ 20
中小企業 △ 23 △ 12 △ 25 △ 22
大企業 △ 20   10 △ 10 △ 14

4.雇用人員

 全産業の雇用人員BSIをみると、4~6月期実績△16から7~9月見込み△20、10~12月期△21となり、不足感が強まる見通し。
 このうち、大企業では人員過剰から足もとやや人員不足に転じており、中小企業においても不足感が強まる見通し。

雇用人員BSI

前回実績 今回実績 今回実績見込み 次回見通し
2021年
1~3月期
2021年
4~6月期
2021年
7~9月期
2021年
10~12月期
全産業 △ 14 △ 16 △ 20 △ 21
製造業   5   1 △ 5 △ 9
非製造業 △ 22 △ 21 △ 23 △ 27
中小企業 △ 18 △ 18 △ 21 △ 24
大企業   6   6 △ 3   0

5.資金繰り

 全産業の資金繰りBSIをみると、21年4~6月期実績△2から、7~9月見込み△10、10~12月期△13と悪化する見通し。
 コロナ禍による影響に対し、国や自治体、金融機関により各種支援策が講じられているが、コロナ禍の長期化で売上減少や収益低迷から、資金繰りBSIは先行きマイナスとなる見通し。

資金繰りBSI

前回実績 今回実績 今回実績見込み 次回見通し
2021年
1~3月期
2021年
4~6月期
2021年
7~9月期
2021年
10~12月期
全産業 △ 14 △ 2 △ 10 △ 13
製造業  △ 21 △ 7 △ 18 △ 16
非製造業 △ 12   0 △ 6 △ 10
中小企業 △ 14 △ 4 △ 11 △ 12
大企業 △ 18   10   0 △ 10

業種別 経営上の問題点(複数回答、3項目を選択・上位10位まで)

6.経営上の問題点

 経営上の問題点(3つ以内の複数回答、全産業計)は、「売上・受注の不振」が50.8%でトップ。これに「人材不足」が41.7%、「設備の老朽化」が33.7%で続く。
 「売上・受注の不振」については、「半導体不足により製品の供給の停滞」(卸売業)や、「県境を跨ぐ旅行・帰省の中止や延期が呼び掛けられていることによる売上の低調推移」(サービス業)などのコメントが寄せられた。
 また、雇用関連の課題では、「人材不足」については、「その対応として、完全週休二日制の導入促進や、資格や免許取得するよう社員を講習や研修に参加させている」(建設業)、「賃金の上昇」では、今年10月、最低賃金が793円から28円引き上げられ821円となることへの対応を課題とするコメントが寄せられた。

(泉  猛)

景況感の判断理由など(抜粋)

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