このところ円安ドル高基調が続き、22年10月21日には一時1ドル151円台まで下落し、約32年振りの円安水準となった。そこで、特別アンケートとして「円安による経営への影響」を調査した。
Ⅰ.業績への影響 (1)良い影響 (2)悪い影響
Ⅱ.業績への影響 自由コメント
Ⅲ.円安への対応策
Ⅳ.円安への対応状況・行政への要望等
5.回答企業数:130社
製造業36社、非製造業94社 合計130社(回答率41.8%)
Ⅰ.業績への影響 -マイナスの影響が約6割-
円安による業績への影響について、「かなり良い影響がある」との回答が6.2%(8社)、「どちらかと言えば良い影響がある」が3.8%(5社)となっており、これらを合わせた『良い影響がある』は10.0%(13社)であった(図表1)。
その内容を複数回答で尋ねたところ、「為替差益の発生」が38.5%(5社)、「輸出の増加」が30.8%(4社)、「訪日外国人向けの売上増加」と「取引先の業況改善」がそれぞれ15.4%(2社)であった(図表2)。
その内容を、複数回答で尋ねたところ、「原材料・部品などの仕入価格上昇」が最も多く90.9%(70社)、これに「エネルギー価格の上昇」が62.3%(48社)で続き、「物価上昇による消費マインドの低下」も26.0%(20社)であった(図表3)。
これを業種別にみると、『良い影響がある』と回答したのは、製造業、サービス業、卸売業の一部にとどまった一方、『悪い影響がある』との回答は、運輸業では75.1%(12社)、小売業で71.4%(10社)、製造業で66.7%(24社)、建設業で64.3%(9社)に上った。
なお、「為替は業績には影響しない」は20.8%(27社)となっており、特にサービス業では57.9%(11社)であった(図表4)。
Ⅱ.経営への影響(自由コメント) ―物価高が続くなか、価格転嫁難-
円安による経営への影響を自由意見で尋ねたところ、「輸入原材料の高騰による経費の圧迫」(製造業)、「燃油価格の上昇で補助金をいつまでもらえるか不安」(運輸業)、「原材料仕入価格の高止まりが続いており、収益面に影響がでている」(建設業)などのコメントが寄せられた。
Ⅲ.円安への対応策 -販売価格への転嫁が4割超-
現在実施中あるいは今後実施予定の「円安への対応策」を複数回答で尋ねたところ、「販売価格への転嫁」が41.5%(54社)で最も多く、これに「仕入先との交渉」が34.6%(45社)、「経費の削減」が32.3%(42社)で続いた。一方、「特に対応はしていない」と回答した企業は38.5%(50社)に上った。(図表5)
Ⅳ.円安への対応状況・行政への要望等
円安への対応状況や、行政等への要望などのコメントは次のとおりであった。
〇資金面での支援
「各種補助金等による支援」、「一時的な対処ではない、長期的な観点にたった緊急融資等」(製造業)
〇物価の上昇分を価格転嫁によって対応
「コストの低減と価格転嫁を行う」(製造業)、「公共工事ではインフレスライド条項があり、価格転嫁が見込まれる」(建設業)
〇為替レートの安定
「為替の安定が望ましく、円安円高の急激な変動への対応」(卸売業)
さいごに
日米の金利差などを背景とした円安基調から輸入物価の高騰により、県内企業の収益環境は厳しい状況が続いている。一方で、コロナの影響は徐々に沈静化しつつあり、入国制限も緩和され、今後、円安を追い風としたインバウンド需要が増加するとみられる。こうしたメリットを、観光関連をはじめとする県内企業が享受することを期待したい。
(2022.12.7 泉 猛)